東北代表・壮楼寺早苗
会場内は暗黒に包まれていた。
紹介を受けた壮楼寺も姿を見せず、会場はしんと静まり返っている。かと言って、その場の誰もがどよめかず狼狽えず、ただ期待だけを込めてじっと何かを待ち望んでいた。
壮楼寺の家系は代々、映像や音楽を用いた特殊効果や演出を得意とする家系である。CGやAIなどを駆使した技術とセンスの融合体。これまでにも数多くの広告事業やイベント事業を手掛け、その全てで成功を収め、莫大な支持と好評価を得て賞賛されてきた。まさに一流の血筋と言えるだろう。
故に、会場内はただ期待と興奮だけに包まれており、東北地方代表たる彼女の作品を心待ちにするばかりだったのだ。
──ド ォ ン。
そしてついに、突然落雷にも似た音が会場に響き、人々は皆浮き足立って息を呑む。
直後、暗黒の中で一際異彩を放つ、閃光と紫電を纏いながら、一つの作品と一人のお嬢様が姿を現した。
『ウオオオオオオオオオッッ!!』
その衝撃に、司会も観客も皆が沸き立ち、会場が一気に盛り上がる。突如として現れた……、かのように見える壮楼寺の令嬢とその作品は、これまで満ちていた静寂を破り捨てながら圧倒的存在感を放ち、まさしく雷神が地上に降り立ったかのような衝撃であったのだ。
「マラべラスッッ!!」
運営最高責任者である布都藤大金玉斎が勇ましく声を上げる。
『おーっとォッ! ここで早速のマラべラスがまろびでたァーッッ!! 今大会はロケットスタートで大荒れかあ〜ッ!?』
司会もまた大袈裟にリアクションを取り、会場のボルテージはさらに高まる。大きな歓声は会場の空気をビリビリと揺らし、その中でも閃光のおちんぽは凛とステージに反り立っていた。
ちなみに『マラべラス』とは、作品であるおちんぽを褒める掛け声の中でも最上位に位置するものである。みんな知ってるね。
「まあ〜! これは見事な青色発光ですね〜。寒色系の明るい発光はぁ、やわらかな暖色系に比べて難易度が高いですから〜。まさしく雷光のようなクールな輝き、お見事です〜ぅ」
加えて、白指先生が嬉しそうに目を輝かせ、補足説明をしつつ解説をしてくれる。
「おちんぽのゲーミング発光はぁ、主に黄・橙・赤によるグラデーションですからねぇ、あたたかみのある暖色系がベースとなりますぅ。おちんぽ。それは生物である故に」
「然り。故に、反対に緑・水色・青といった寒色系はそもそもの発色自体が難しく、またその発光は機械的、無機質な光という印象が先立ってしまう……。しかし、この発色と輝きはまさしく黒雲を走る雷の如し! 見事な仕上がりであるッ!」
審査員席からの評判も良く、会場の観客も皆喜んでいる。壮楼寺のご令嬢はその手応えに満足気に口角を上げ、小さくガッツポーズを決めた。
「いやあ好きですねぇ〜。壮楼寺家の有する超絶的な技術からくる、サウンドと映像とおちんぽのコラボレーション。これは立体音響とプロジェクションマッピングによる演出効果ですねぇ〜。しかしながら、おちんぽもまたそれらの先端技術に負けておらず、見事な青色発光とその反りは、黒雲から顔を覗かせる青龍を思わせる仕事ぶり。いやあ好きですねえ〜。……ところで、その根本の“黒”は一体なんでしょうか。それがまたおちんぽの陰影をハッキリとさせていて、好きですねえ〜」
『おっとォ〜ォッ!! スキゾフさんも口が回る回るゥッ! 我らが出資者サマのお眼鏡にも適ったようでありま〜すッ! さあてそしてそしてェッ! その映像技術やおちんぽの発光をも隠す燻銀な活躍をする“黒”の正体とは、一体なんなのでしょうかァッ!? 壮楼寺選手、お答えをお願いできますかァッ!?」
司会は大げさに会場を盛り上げて、一斉にどよめきが走る。
光を通さない黒といえば、塗装剤にはベンタブラックというものがある。光の99パーセント以上を遮断し、一切の煌めきのない暗黒である。
しかし、それだとしたらそれもまた人工物。生命の象徴たるおちんぽと組み合わせようものならば、その難易度はハネ上がる。ただでさえ先端技術によるバフを既にいくつも掛けているのだ。これ以上は、ちんぽがちんぽで無くなってしまうだろう。
壮楼寺の令嬢は、さすがそこに気づくか、とでも言いたげに笑みを浮かべると、司会からハンドマイクを受け取って、快く答えた。
「はっ。それなる“黒”は、島より発見された新種の一つ……、“チンゲゴケ”にて。我が父である、壮楼寺 粋杉(そうろうじ いきすぎ)が発見し、持ち帰り、そしてこの壮楼寺早苗が、初めて栽培に成功したものでありまする」
早苗お嬢様はゆっくりと、それでいて力強く、その正体を答えた。すると、会場はさらにどよめきザワついた。
「チンゲゴケですって〜!?」「そんなもの、調査団の人たちからすれば網に引っかかって……、そのまま捨ててしまうようなモノでしてよ!」「それをおちんぽの陰影を付ける為に取り扱うだなんて……!」「うおー!やりますわね小娘! 私達も食べてみたいですわ〜ッ!」
ザワめきはやがて歓声へと変わり、いつしか誰もが壮楼寺を褒め称えていた。愛する父の娘への思い、それに応えるかのような父から娘への感謝の煌めき。言わば、このおちんぽは父との思い出と絆の証。父のおちんぽなのだ。
『ケヒャヒャーーッッ! これはまた素晴らしいモノが最初から飛び出してしまいましたァッ!! なお、公平を期すため、評価得点等は最後にまとめて発表いたしまァ〜すッ!! それでは壮楼寺お嬢様、ありがとうございましたァ〜ッ!! 続いてのお嬢様に参りましょう! 関西ブロックの〜……、零出池三二一お嬢様だぁ〜ッッ!!」
ゲーミングおちんぽ華道お嬢様バトル ルルビイ @ruruvi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ゲーミングおちんぽ華道お嬢様バトルの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます