マスコミュール〜あなたの人生を聞かせてください〜

LilWill is Squirming

飛び降りる直前の中村海斗

イ「なぜ、あなたは死ぬのですか?」


中「生きたいという希望が無くなったから。……うーんそれだけだったらまだ良かったのかも。生きたいと願うから死ぬ。それだけです」


イ「深いですね」


中「そうですか? すごく単純なことだと思いますよ」


イ「私は生きたいと願って生きてるわけではありません」


中「だからですよ」


イ「そうですか。わかったような、わからないような気がします」


中「わかっちゃダメです。死んでしまいますから」


イ「まるで病気みたいだ」


中「そうです。必ず死に至る病です」


イ「(笑った後に)その病気は家族や恋人に治すことはできますか?」


中「孤独は猛毒で病の進行を早めてしまう。愛によって寿命を長くすることはできると思います」


イ「なるほど。……なんだかあなたはこれから死に行く人には見えないですね」


中「それはよかった」


イ「どうして?」


中「私こそが正常で、あなたの方が狂ってるからです」


イ「それは真理というやつですか?」


中「もっと単純なことだと思いますよ」


イ「そうですか。(少し考えて)例えばどうしたらあなたは明日を生きることができましたか?」


中「難しいです。(悩むように声を漏らしながら)遺書の中にも書きましたが、これはたまたま私がたどり着いた場所です。たとえば今日電車が遅れたでしょう?」


イ「ええ」


中「これが遅れなかったら私は明日も生きて、その代わり僕ではない誰かがここにいた」


イ「世界って不思議ですね」


中「だから僕の生死は偶然で、だから意味があるんです。死んだっていいんです。多分何かしらの……」


イ「泣いていますね」


中「生きたいと願う証拠です」


イ「お金はあなたを幸せにしましたか?」


中「金によって幸せになる人もいるのでしょうが、僕はそうではありませんでした」


イ「お金は人を幸せにはしてくれないのでしょうか?」


中「大事なのはお金の使い方です。みんな金の稼ぎ方は上手いが金の使い方が下手だ。それなのにもっともっと稼ぎ方を勉強し、なぜか貧乏になったと喚く」


イ「少しわかるような気がします」


中「……そろそろ行くよ。最後にあなたと話せてよかった」


イ「そうですか。いってらっしゃいませ。……どうぞお気をつけて」

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