第2話 迷い込む少年 後

「落ち着いたかい?」

 5分ほど泣いた少年はうなずく。彼は店主にお礼を言おうとするが、口を開こうとしたところ、人差し指で抑えられた。

「大丈夫だよ、さて、ここはさっきも言った通り様々な言珠が集まるんだ。そうだなぁ、君がここに来る理由もきっとあるから。探してみてもいいかい?」

 少年はうなずく。店主は微笑んで紫色の扉の向こうへ消えた。少年は窓の外の風景を眺める。そしてあることに気が付いた。誰も窓の方を見ないで、まるでそこには何もないかのように歩いてゆく。窓は無意識に見てしまうことも多い少年は、それを不審に思った。


 しばらくして、店主が返ってきた。険しい顔と手には黒く、そして禍々しい赤の混じったオーブだ。

「君のを見つけたよ。ひどいね、これは。よく頑張って耐えたね。君の両親にはいつもなんて言っているの?」

 少年はしばらく黙った後、こう言った。

「いつも転んだとか、遊んでる途中で前を見てなかったとか言ってごまかしてた」

 店主は悲しそうな顔をして今度は黄色の扉に入り、今度は10分と立たずに黄色く、淡く光るオーブを持ってきた。

「この黄色のオーブ、覗いてごらん?君の両親であってるかな?」

 少年がのぞくとそこには両親の心配そうな顔が見えた。

『裕太気を失ってるだけって先生は言ってたけど…もし何かあったら私は』

『馬鹿なこと言うな!裕太は…必ず戻ってくる…』

 その両親の姿を見て胸が苦しくなる。今、きっと心配してくれている。店主は微笑んでそっと黄色のオーブを少年の手から渡してもらう。

「親御さんはすごく心配してくれてるみたいだね。きっととても優しいんだろう?」

 そう言って黒と黄色のオーブを合わせる。するとまばゆい光とともに少年は包まれてゆく。そして店主の声が徐々に遠くなってゆく。

「僕の名前はエウレカ。ご両親に正直に話してごらん?きっと、いい結果が待ってるよ」

 気が付くとベットの上にいて少年は父と母に抱きしめられた。



-おまけ-

 少年はその後正直に今までの事を話した。両親は真摯に受け止めすぐさま対応した。具体的に、相談センターや学校の相談員。事を重大視した学年主任が緊急保護者会を開きそれを公表した。学校でそれはすぐさま広がりいじめっ子たちは今までのように暴力で得た地位を失い、たちまち肩身の狭い思いをすることとなった。

 そして転校が決まり、最後には裕太に対して謝罪をした。

その様子を空色のオーブで見たエウレカは満足そうにコーヒー片手にカウンターへ戻る。

書店エウレカ、そこは不思議なところにあるお店。どこにもなくて、どこにでもある。辛い人や困った人はここに来れば店主がコーヒーを用意して待っているだろう。

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書店EUREKA EUREKA(エウレカ) @EUREKAeureka0013

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