大手事務所のVtuberになったと思ったら、プロゲーマーになっていた。

月影澪央

第1話

 誰でも簡単に動画投稿や配信ができるようになったこの時代。それを生業とする人たちも登場している。その中でも配信サイトで配信をすることがメインの人たちを『ストリーマー』『ライバー』と呼ぶ。


 そのストリーマーたちには、『箱』というものがある。いわゆる『箱推し』の箱だ。グループだとか、事務所だとか、そういう枠組みのことだ。


 そんな中で俺は、ストリーマーでは大きな事務所のStarlight gameingのストリーマー部門のVライバーオーディションに合格し、デビューと果たした。


 Starlight gameingはVライバー事務所として立ち上げられ、のちにプロチームも設立し、Vライバー事務所としてのノウハウを活かした売り出し方で、プロゲーミングチームとしても人気になった。


 俺は幼い頃からゲームをしてきて、それが当たり前の環境で育ってきた。プロゲーマーも夢の一つだった。だからこの事務所を目指したまである。でも、プロになることは諦めた。そんな甘い世界じゃないし、特に日本ではプロになっても数年でキャリアは終わり、その後のキャリアなんて無いに等しい。だからオファーが来ていたけど断った。


 また、オファーを断った翌年、日本リーグがeスポーツ先進国の韓国リーグと統合されて、選べる選手の幅が広がって強い韓国人たちとそれと張り合えるものすごく強い日本人だけが残る結果となって、おそらくオファーを受けていたら最悪そこで路頭に迷っていただろう。


 まあ、そんな俺が、同じように安定しないVライバーになるなんて矛盾していると思うが、他にできることが無いことに気が付いた。



 そうしてデビューから一年が経った頃。事務所のネームバリューの恩恵を受けながら、ノルマだったチャンネル登録者十万人も早々に突破し、それなりに名前も知られるVライバーになった。ちなみにグループのように売り出された同期たちはこの一年で誰もいなくなり、悲劇の世代と言われた。


 そのデビュー一周年の配信が終わった後、マネージャーから連絡が来た。その内容は、Starlight gameingのプロゲーミングチームのある部門で試合に出てくれないかと言われた。


 確かに昔オファーがあったことは話していて、そのゲームタイトルと同じ部門だったが、最近はガチでやっているわけではないし、チームゲームの経験もないのでさすがに戦力になるとは思えない。


 でも諦め切れない気持ちもあって、俺はマネージャーから詳しく話を聞いた。


 詳しく聞くと、選手の一人が体調不良で次のシーズンは参加できないということになり、急遽新しいメンバーを集めないといけなくなったが、その候補となるような実力の選手はすでに所属が決まってしまっていて勝つために取るような新しい人はいないようだった。しかもその選手が中核の主力選手だったのでなおさら代わりになる人はいなかった。それならもうチーム・事務所として契約している人から取ってくればいいという考えになったのだろう。


 そんな状況で声をかけてもらったわけだし、俺が入ることで話題も作れる。そう考えて、俺はプロゲーミング部門への移籍を決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大手事務所のVtuberになったと思ったら、プロゲーマーになっていた。 月影澪央 @reo_neko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説