第2話 魔法使いの朝

 大人しく火の番をしていたら、ポリアフが来てくれた。


 ポリアフは私の一番のお友達!きれいな黒髪、真っ白な肌。大きく横長の目は美しくて、私と大違いだけどね。


「ポリアフ!遊びに来てくれたの。」


「本を読みに。ここが一番明るいから。」


「えー、一緒に遊ぼうよ。」


「嫌よ。昼間あんなに遊んだじゃない。」


 そういって、ポリアフは本当に本を読み始めてしまった。ポリアフは頭がよくて、読んでる本は私よりずっと先をいってる。


「これも、素晴らしい物語だったわ。本の木さん。」


 そう言って、ポリアフは火の近くにある、大きな本の木に声をかける。


「これも面白かった。次の本を課して頂戴。」


「あい、わかった。」


 そういうとポリアフの本をパクっとのんで、新しい本をベロンとだした。分厚い本だ。


「やったわ!原始の物語!私これ、好きなの。」


「これは前よりも難しいぞ。」


「すぐに読むわ!ありがとう、クムラー。」


 そう言って、あたポリアフは黙々と本を読み始めてしまう。


「ねえ、クムラー、私にもなんか本出してよ。」


「お前はまだ前の本を読んでない。」


「だって、あれ、つまんないんだもん。」


「すべての物語が楽しいとは限らない。それを知るのもまた本の役目だ。」


「何それ、つまんない。」


 結局クムラーは私に本を出してくれなくて、私は夜通し、本を読むポリアフの隣にいた。



 ようやく、朝日が昇り始めた頃、ポリアフはようやく、本を閉じた。


「朝が来たわね。」


「もしかして、今日の朝の当番、ポリアフ?」


「そうよ。」


「あー!だから本を読みに来たんだ!朝まで起きてられるように!」


「ふふ。そうかもね。」


「なんか悔しい。」


「いいじゃない。貴方は火の魔法使いで役割がたくさんあって。私はまだ時々の朝の当番しかないわ。」


「えー、代わってほしいんだけどなぁ。」


「代わってあげたいくらいなんだけどね。」


 そういって、ポリアフはちょっと悲しそうな顔をした。そして、朝の当番の仕事を始める。


「マカニ!」


 彼女がそういうと風が渦巻いて、ポリアフがちょっと浮いた。


「皆さん、朝ですよ!さあ、今日を始めましょう!」


 そういうと、ポリアフは風を使って、木の家の窓を風で開けていった。


「ああ、おはよう。」


「おはようございます。」


「おっはよー!」


 木の窓から住人たちが次々と顔を出して、朝の挨拶をしだす。


「おはよう!今日の当番はポリアフか!いい風だ!」


 そう言って、アダムも顔を出す。結局後から来てくれなかった。ちぇ。


 住人たちはそうやって朝の涼やかな風浴びて、今日を迎える。

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愛の森ー魔法使いだけの国でー K.night @hayashi-satoru

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