第13話 魔王

戦火の町で、少年は鳴り響く空爆の轟音に怯えていた。

少年の家族は皆、戦争の犠牲になっていた。

少年は祈った。

「神様でも、悪魔でもいい。僕の魂をあげるから、人類なんか滅ぼしてしまって!」

ある国の都会の公園。

笑顔で散策する人々が行きかっている。

そんな中に一人の男が現れて、周囲に良く響く、厳かな声で宣言した。

「われは魔王である」

人々が立ち止まり、男に注目すると、男は再び宣言した。

「われは魔王である。魂の誓願を受けて今顕現した。誓願の中身は人類の滅亡である」

野次馬が集まってきて、男を遠巻きに取り囲んだ。

野次馬の一人が、男を揶揄うように訊いた。

「どれだけの魂と交換に、人類を滅ぼすのですか?魔王様」

「誓願に用いられた魂は一つである」

すると周りから失笑が起こる。

「それはいくら何でも安すぎませんか?」

先程の野次馬が呆れたように言うと、魔王と名乗った男は冷笑を浮かべて答えた。

「お前たち人類の価値など、もはや魂一つ分の価値しかないのだ。では滅びよ」

その日、全人類が滅亡した。

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