第3話 玄関の葉っぱ

何年か前の話。

ある朝、愛犬の散歩に出ようとした時、玄関の扉の内側に小さな葉っぱが落ちていた。

気づかない間に入り込んだんだろうと思い、つまんで外に捨てる。

そして散歩から戻ると、また同じ葉っぱが玄関の内側に落ちていた。

少し嫌な予感がしたが、愛犬がクンクン臭いをかいでいるので、実体があるのだろうと思い、今度は念を入れて、玄関ポーチに置いてある蓋付きのごみ箱に捨てた。

これで安心。

と思ったら、翌日また玄関の内側に葉っぱが落ちていた。

偶然が重なっただけだと、自分に言い聞かせて葉っぱをつまむと、家から少し離れた線路内に捨てた。不法投棄かなと思ったが、小さな葉っぱ一枚なので許してもらおう。

そして散歩を終えて帰ってみると、半分予想していたが、また葉っぱが落ちている。

うむ、これは困った。

これはもしかして、以前のサボテンのパターンかな?

とすると、妻には見えていないということか。下手なことを言わない方がいいかも知れない。

特に迷惑という訳でもないので、放置することにした。

葉っぱはそれからも、その場所に落ちたままだったが、家に上がり込んでくる訳でもないので、そのうち気にならなくなった。

そんなある日。

隣家で何か工事をする音がしたので、外に出て見ると、庭の大きな桜の木を伐採しているようだった。結構立派な木だったので、枝が外に張り出して電線にかかるので、毎年業者に頼んで枝を剪定してもらっているようだった。事情は分からないが、思い切って切ることにしたのだろう。

そしてその翌日から、玄関の葉っぱはいなくなった。

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