箱にまつわるエトセトラ

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箱にまつわるエトセトラ

「箱にまつわるエトセトラ」


 なんだかどっかの女性二人組の、昔の曲名みたい?


 まぁそんなことはどーうでも良いのだけれど、『箱』って言ってもねぇ、色々と有り過ぎるので、片っ端からあげつらっていきましょう。


《お弁当箱》


 子どもの頃のお弁当箱って、可愛らしい形や色、、それに蓋や外側壁面にキャラクターが描かれていたり、何ならその容器自体が○ッキーマウスだったり、気○車トー○スだったり、○ンパンマンだったりと、兎に角子どもが好きそうなモノが多いし、子どももそれを喜ぶんだから、親としてはどうしてもそういったモノを選んで買っちゃいますよね。

 だけど、何時ごろからでしょうか、その可愛らしいお弁当箱のことが、周りのお友達に対して少し恥ずかしくなる年頃って。

 幼稚園に通った頃には間違いなく、

『ぼくの(あたしの)おべんとうバコって、○○なのぉ』と、お友達や先生に自慢していた筈なのに、

 小学校に上がってしばらく経つと(まぁ子どもによって個人差はあるとは思いますが)、

『ねぇ、お母さん。 今度の遠足のお弁当なんだけど、お弁当箱、フツーのにして。 ね、お願い、絶対だからね』

 そう母親にお願いした記憶はありませんか?

 言われた母親は、ちょっと寂しく、そしてちょっと息子(娘)の成長を嬉しく思い、そしてほんの少しだけ面倒臭いって思ったかもしれませんね。

 かくいう私の母は、とてもいい人だったのですが、少し天然系の忘れっぽい人で、私がお弁当箱の変更を申し出た時の遠足に、やっぱりド○えもんのお弁当箱のまんまでした。

 遠足から帰ってその日一日、私が拗ねて母親と口を利かなかったことは、言うまでもありませんが、今はとても反省しています。

 因みにうちの息子のお弁当箱は、妻の趣味で夢の国のネズミの形のやつでした。

 いつまで使っていたかは、定かではありません。

 今でもキッチンの戸棚の奥のどこかに在るかも知れません。



《おもちゃ箱から跳び出すのはどっち?》


 童謡「おもちゃのマーチ」と「おもちゃのチャチャチャ」という2つの曲があるのは皆さんもご存じでしょう。

 私はいつもこんがらがっていました。

 果たしてどっちがおもちゃ箱から跳び出すのだったか、と。

 子どもの頃、散々歌った(歌わされた?)にも拘わらず、出だしの「やっとこやっとこ くりだした~」(おもちゃのマーチ)と、サビの部分「おもちゃのチャチャチャ おもちゃのチャチャチャ ちゃちゃちゃおもちゃの チャッチャッチャ」(おもちゃのチャチャチャ)、頭の中ではそれしか浮かんできません。

 何の拍子にだかそんなことを思い、ちょっとだけモヤっとして、ほんの数秒で忘れてしまうのだけれど、どうでも良いことでもあり、更にそのモヤっと感が嫌いではなく、十数年来ふとそのことが頭を過ぎる度に、自らを苦笑し、またか、と思いながらも放ったらかしにしておきました。(母親の遺伝なのか、私も物覚えに難があるらしい・・・)

 しかーし、先日、この「どっちが跳びだす?問題」が唐突に頭の中に浮かび上がった時、たまたま休みで、しかも私以外の家族は買い物に出かけており、ひとり留守番をしていた私は、暇を持て余して適当にYouTube動画を視聴しているという、奇跡の偶然が重なり、遂にその答えに決着がついたのでした。


 跳び出したのは、「おもちゃのチャチャチャ」、でした。


 ついでに調べてみると、「おもちゃのマーチ」は1923年(大正12年)、「おもちゃのチャチャチャ」は1959年(昭和34年)(童謡として歌詞変更が為されたのは1962年)の発表らしいです。


 実にスッキリしたのですが、もうこの先このことでモヤっとすることが無いのだと思うと、何だか少しだけ寂しいなぁ。

 まぁ、何の役にも立たない、ちょっとだけ新しい知識が身に付きました・・・。



《投票箱》


 岸田さん、世間では色々と言われていますが、解散総選挙は一体いつになるのでしょうか。

 別に私は、ここで自民党や岸田さんの悪口を言おうとしている訳ではありません。


大人な皆さんならご存知かもしれませんが、国政選挙、地方選挙共に、投票所一番乗りの有権者に与えられる特別任務として、「零票確認」というものがあります。

 これは公職選挙法施行令第34条「投票管理者は、選挙人が投票をする前に、投票所にいる選挙人の面前で投票箱を開き、その中に何も入っていないことを示さなければならない」との定めに従って行われる、公職選挙選挙に於ける大事な「儀式」です。


 まだ誰も歩いていない新雪に、初めて自分が足跡を付けるかのような(いや、そんな軽いもんじゃない?)、ただ一人に与えられる特別な任務であり、権利でもあります。


 そんな、投票箱の底を見たって仕様がない?


 ははは、まぁそうでしょうが、私は3回チャレンジして失敗し(早起きのお年寄りって、ホントに早いんだわっ)、4度目にやっと念願叶って確認者になることが出来ました。


 うん、確かに、投票箱の底を見たからって、どうということはなかった、けれど・・・


 銀色の箱の底も、やっぱり銀色でしたわ。


 だけど、その日、何だかとっても清々しい気持ちで一日を過ごせた気がします。(私、至って単純なヤツなんです)


 皆さん、選挙には行きましょうね。



《裁縫箱》


 もう随分前に亡くなってしまった父方の祖母が、和裁の先生をしておりました。

 子どもの頃、夏には祖母のこさえてくれた甚平を羽織って、夏祭りなんかに出掛けた記憶がうっすらと残っています。

 生前の祖父母の家に遊びに行く度に、祖母が眼鏡(老眼鏡)をせわしなく着けたり外したりしながら、器用な手先でスイスイと生地を縫い上げて行く様を、私は物珍しく眺めていたものです。

 祖母が余りにも簡単そうに縫い上げていくその様子をずっと見慣れていた私は、いつしか勝手に自分にも出来ると思い込み、いつの間にか大人になっていました。

 勿論実際にはモノを縫ったことなどありませんが・・・。


 先日、随分と永いことお世話になったジーンズが、とうとう内股の縫い目の部分が裂けて穴が開いてしまいました。

 古いのだけど愛着があって、捨てるには惜しいジーンズ。


 ま、これくらいなら、俺でもちゃんと縫えるだろう。元の縫い目に沿って、補強するように縫えば良い。


 私は妻の裁縫箱を持ち出して、寝室のベッドの上に胡坐をかくと、針に糸を通して、早速ジーンズを縫い始めました。


 が、


 悪戦苦闘・・・あくせんくとう・・・アクセンクトウ・・・


 生地が硬すぎて上手く針を通せないし、イメージではスイスイなのに、実際はあっちに撚れそっちに歪み、全く先に進まない。


 くっそ、イライラして来たぞ。


「どうしたの? あなた」

 救世主、現る。

 寝室に入って来た妻に驚いた私でしたが、何かの変な見栄っ張りで、こう答えてしまいました。。

「いやね、ジーンズが破けちゃってさ、今、自分で縫ってるところ。 もう夕飯の準備できたのかい? もうちょっとで縫い終わるから、終わったら直ぐ行くよ」


 しかし、妻にはバレていました。溜息交じりに、

「あなた、ちょっとソレ、こっちに貸してごらんなさい」


 私は仕方なくソレをすごすごと渡すしかありません。


「あらあら・・・」

 妻は少し呆れた表情をして、それからそこにあった裁縫箱から糸切りバサミを取り出すと、今しがた私が縫ったばかりの糸を、パチンパチンと切ってしまいました。

「あっ、折角・・・」

「大丈夫、私が後でミシンで縫い直してあげるから。 もうお夕飯の準備出来るから、裁縫箱、片付けておいて」


 私は針と受け取ったハサミを裁縫箱に仕舞い、それを元あった棚の上に戻すと、妻の後を追って寝室を出たのでした。


 そして思います。

 私が裁縫箱に触れることは、この先もう二度と無いだろう、と。


 夕飯後、妻がミシンで裏返したジーンズを、元の縫い目に沿って実に手際よく縫い上げていく姿を眺めながら、ちょっとだけアンニュイで幸せだった祖父母の家でのことを思い出しました。



《ゴミ箱》


 コロナ禍が明け、訪日外国人が増えてきています。

 それについてどうのこうの言うつもりはありません(ここではね)。

 日本に観光でいらっしゃったのでしょうから、思いっきり楽しんで頂ければと思います。


 外国人が日本についてのインタビューなどでよく話題になるのが、「おもてなし」(接客、接遇など)、「和食」(新鮮な魚介や独特な食文化)、それから「清潔」(道路、公共施設、トイレが綺麗→衛生観念が高い)みたいなコメントが多い様です。


 その中でも、最後に挙げた「清潔」にちょっとだけ違和感を覚えます。

 外国人曰く、

「二ホンノ街角ニハ、ゴミ箱ガ無イノニ、ドーシテ、道端二ゴミガ無イノデスカ?」

 そんなコメントを聞いた時です。


 いえ、確かに日本人は総じて、昔から綺麗好きだったであろうことに異論はありません。

 ただ、実は公共スペースでゴミ箱が激減したのは、あの悪名高い最悪のカルト教団、オウム真理教の地下鉄サリン事件がきっかけになったのです。

 それまで街や公園の至るところに設置されていた公共のゴミ箱は、あっという間に蓋をされ、その後撤去されていきました。

 良い悪いの話ではなく、それ以前とそれ以後、そういったことでしょうか。


 30年ほど前には、タバコのポイ捨てをする大人をたくさん見た記憶がありますし(当時の映画なんかでもポイポイ捨ててますしね)、公園のゴミ箱周辺は、昔はあまり綺麗ではなかったと記憶していて、公衆トイレも今みたいに清潔感はなかったような気がします。


 つまんない話になりそうなので、ここで《ゴミ箱》の話はお終いです。



《下駄箱》


 昔憧れた、あだち充先生の描く青春漫画なんかで、放課後、下駄箱の扉を開けると、そこには1通のラブレターが・・・。

 なーんていうシチュエーション。


 しかし、私が通った中学は、下駄箱に扉なんてものは無く、ただの棚に靴と上履きを置くだけだったので、そんな素敵なワクワクドキドキは無かったし、高校に至ってはそもそも土足のままで良かったので、下駄箱すら存在しなかったのですが・・・。


 先日、会社帰りに同僚4人と、小上がりの居酒屋に行った会計後、下駄箱に木札を差し込んだのですが、その扉はうんともすんとも開く気配が無い。


 おかしい。

 もう一度木札の番号を確かめてみる。


 『ろー2』


 確かに『ろー2』に差し込んだ筈。

 再度同じ下駄箱に差し込んでみたのですが、やっぱりダメ。


 同僚たちは既に靴を履き終え、私のことを待っています。


 おいおい、どうなってるんだ。焦って酔いが覚めちまうじゃねぇか。


「どうしたんだ? 開かないのか? どれ、貸してみろ」

 私は山下に木札を差し出しました。

「これって、『ろ』じゃなくて、『る』だろ。 こっちだ」

 山下が『るー2』にそれを差し込むと、見事にカチャリと、その扉は開いた。


 扉の向こうに、確かに私の革靴の踵が見え、ホッとします。

「何だよ、酔っ払って、目まで見えなくなっちまったのか?」

「っるっせい」


 靴を履いて帰れないかも、っていう心臓に悪いドキドキ感と、何故に「いろは順? あいうえお順で良くね?」との恨み節で、私の酔いは完全に覚め、昔憧れた下駄箱のシチュエーションは完全に上書きされたのでした。


 下駄箱には気を付けろぉ。



 ここからは、今までに関わった色んな《箱》を・・・



《跳び箱》

 体育の授業で、結構好きな部類の種目でした。

 小学生の頃は運動が出来る子モテますが、①足が速い子、②ドッジボールが上手な子、③サッカーか野球をやってる子、そして4番目くらいにクラス一高い跳び箱が跳べる子、そんな感じだったような気がします。



《貯金箱》

 少し前、自動車を新車で買おうと思って、その頭金にと500円玉貯金で50万円溜るという巨大なスチール製の貯金箱を買ったことがあります。

 もちろん途中で諦めて、中途半端に貯まったそのお金で、家族旅行に行くことになりました・・・。

 車は中古で購入し、今でも元気に走っています。



《百葉箱》

 校庭の隅っこにポツンと佇んでいた、アレ。

 覚えてる方、いらっしゃいますでしょうか?



《救急箱》

 マキロン、バファリン、バンドエイド、包帯、絆創膏、ガーゼにハサミ・・・

 大人になってからは、胃薬と湿布しか使ってないような気がします・・・



《筆箱》

 お弁当箱同様、アニメキャラなんかのモノが、段々恥ずかしくなる年頃の思い出って、何だか切なくも、愛おしい。



《化粧箱》

 私がお酒好きであることを知っている知人や取引先の方なんかから、化粧箱入りのお酒を頂くことがあると、何だか勿体なくて、いつまでも箱を捨てられないでいます。

 しかし結局は妻に、断捨離されるのですけどね・・・



《玉手箱》《パンドラの箱》

 私の中では、いつの頃からか、同一のモノみたいな気がしているのですが、間違っていますでしょうか?

 開けて、最後に残ったのは・・・



《巣箱》

 一羽の鳥も訪れてくれなかったのは、

 恐らくペンキとニスをべたべたと塗りすぎだったからと、今ではそう確信しています。



《マッチ箱》

――マッチはいかがですかぁ?


 なんか、切ない。



《ブタ箱》《トラ箱》

 当たり前ですが、ブタ箱は未経験です。

 トラ箱は、若かりし頃、危うく入れられそうになりました。

 いえ、とある噂の為、寧ろ入れて欲しかったのですが、お巡りさんに断られました。

「トラ箱って、朝ご飯食べさせてくれるって噂、本当ですか? 本当なら、是非、トラ箱に入りたいっス」

「君みたいなふざけた奴は入れられません。 酔いも冷めてるみたいだから、帰りなさいっ」

 だって。


 ただの噂だったのか、それとも本当に朝食付きだったのか、真相を突き止めることが出来ず、ちょっと残念。



《お払い箱》

 政治家に言ってやりたい。


 お前、使えないから、要らね。


 あ、政治の話はしないんだった・・・



《運賃箱》

 子どもの頃、「運賃」って言葉が分からなくって、どうしてお金を「ウン・・・」・・・


 止めておきましょう。

 ご想像にお任せします。



《宝石箱》

 あまり関わりがありません。

 いえ、間違えました。

 「あまり」ではなく、「全く」でした。



《びっくり箱》

 ‼

 ビヨーンっ



 映画の台詞で、大好きなものが有ります。

 その映画は、トム・ハンクス主演映画の「フォレスト・ガンプ 一期一会」。


――人生はチョコレートの箱みたいなもの。 開けてみるまで何が入っているか分からない。


 Life was like a box of chocolates. You never know what you`re gonna get.



       ◇◇◇◇



 さてと、一服。


 私は煙草の箱を手に取り、何の気もなく、タバコの箱書きを眺め、それから、煙草を取り出すでもなく、元の場所にそっと戻した。


 禁煙・・・出来るかな・・・



         おしまい

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