第62話
食事を終え小屋へ帰り、暫し黙してから、
「子狐、身支度をしろ。日が暮れる前に都へ行く」
と
「おう! 身支度も何もない。いつでも行けるぞ」
と
「うむ。では行こう」
「ん? 俺、歩けるぞ?」
「
と
「あの、しゅって行くやつ、お前も使えるのか?」
「ふんっ! 無論だ」
と得意げに答えて、
「しっかり掴まっていろ」
と
「おう! ちゃんと掴まっている」
と答えて、
「行くぞ」
と言った。次の瞬間には都の大正門の近くに来ていた。夜になれば門は閉まる。そろそろ、陽が傾き始めていて、門を通る者も少なかった。二人が門へ近付くと、警備の役人が声をかけてきた。
「許可証はあるか?」
もちろん、そんなものは持ってはいない。
「ない」
と答えると、
「名を言え」
と役人が言う。
「
と答えると、
「うむ、通れ」
と通行を許可して、
「
門を開けて、赤麻呂が笑顔で迎え入れた。
「子狐も」
と
「よく来てくれた。お前が人の姿を取り戻したと知って、俺も嬉しい」
赤麻呂が言うと、
「だが、もう人ではない」
と
「はははっ。お前が人でなくても構わぬ。お前はお前だ。そこの子狐も人ではないが、お前と
赤麻呂はそう言ってから、
「それはさておき、本題だ。
と話を切り替えた。
「うむ。
「
赤麻呂が宥めるように言うと、
「分かっている」
落ち着いた口調で
「なあ、一体何があったんだ?」
とのん気に聞いた。
「
赤麻呂が
「うむ」
と
「
と赤麻呂が言うと、
「そうだな」
と
「なんだって⁉ なんて悪い奴らなんだ! 俺がみんな食ってやる!」
と怒りを露わにして息巻いた。
「落ち着け。お前の敵う相手じゃない」
「はははっ。子狐、お前はいい奴だな」
と言って、赤麻呂は楽し気に笑った。それから、二人に向かって、
「今日はここで休むといい。
と言って、部屋を出て行った。
「あいつもいい奴だな。何て名だった?」
「赤麻呂だ」
「お前、何で怒ってるんだ?」
「怒ってなどない!」
と言葉を返し、ぷいっと顔を背けた。
「おかしな奴だなぁ。ほら、もう寝るぞ」
「子兎、ほら、おいで」
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