第61話
そして翌日、
「
と
「うむ、言われなくとも、無理はしない。相手は相当な手練れだ。俺の手には負えぬだろう」
と赤麻呂は答えて、一度言葉を切ると、
「親父殿には報告はしたのか?」
と尋ねた。
「うむ。葛城は既に動いている。だから、お前はもう、この件から引いてくれ。お前の家族に害が及ぶのは避けたい」
「分かった」
とだけ赤麻呂は答えた。赤麻呂にしても、家族が一番大事なのだから、
「
そう言って、赤麻呂の妻の
「
それ以上の言葉を言えず、涙を堪えていた。
「では、俺たちは行きます。
「うむ」
赤麻呂は頷いて、
「さあ、急げ」
と二人を促した。
「手形はあるか?」
すると、そこへ、
「
「これは失礼しました!」
役人は
「お帰りなさいませ、
と改めて挨拶をして、二人を通した。
「
「お前はそのままでいい。俺はお前を守りたい。
そう言って、
「
そんな
「お前が、
「まあ、
と頬を膨らめてみせる
「
と従者が声をかけた。
「うむ」
「
と
「兄上、
「兄上、只今戻りました」
「ただいま、
と笑みを向けた。
「さあ、上がれ。話しは中で聞こう」
「お前が念で話した内容を吟味した。敵は明らかに葛城氏を陥れようとしているようだな。俺の助けが必要なら言ってくれ」
と口火を切った。
「うむ。お前がそう言ってくれて心強い。だが、今は俺たちで対処する。
と
「そうか」
一方その頃、
「おっ!
「まて~!」
そんなふうに遊んでいる
「おい、見ろよ。女だ」
下卑た笑いを浮かべた男たちは、どこかの戦で逃げ落ちてきたような風貌だった。夢中で白兎を追っている
「お前、一人か? 俺たちが遊んでやるぜ?」
にたにたと厭らしい笑みを浮かべて、その手を伸ばしたその時、疾風が吹き、男たちが瞬き一つすると、
「なんだ⁉ お前は!」
一人の男が声を荒らげて聞くと、
「汚らわしい手で触れるな! 下種共が!」
と言う
「子兎? なんで、あいつの手を斬ったのだ? 俺と遊んでくれると言っただけだぞ?」
「う、腕が!」
男の腕は、すっぱりと斬り落とされていたのだ。
「ふんっ!」
「こいつらは、お前と交尾をしようと言ったのだ」
と言うと、
「何だって⁉ ふざけやがって! 俺は妖狐だぞ!」
と
「
腰を抜かしながらも、何とかその場から逃げようと地を這った。それに冷ややかな視線を向けて、
「ふんっ! 俺も
そう言って
「子狐、俺から離れるな」
「俺は妖狐だぞ? 人など何人来ても怖くはない」
と人の姿に戻った
「それでも駄目だ」
「そうか~。お前、俺が傍に居ないと淋しいんだろう?」
とにやりと笑って揶揄ったが、
「お前が大事なのだ」
と
「お前、ほんとに俺の事、大好きなんだな?」
「そうだ」
「分ったよ。お前の傍から離れない。なあ、それより腹が減ったぞ」
「そうか。それなら、街へ行って飯を食おう」
二人が店で食事をしていた時、
『どうした
『分かった。子狐と共にそちらへ向かおう』
「子兎? どうしたのだ?」
「今、
「うむ。お前が行くのなら俺も行くぞ。
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