第60話
「何者だ?」
若い男は、黒い服を身に纏い、顔には覆面をしていて、如何にも妖しい者と言った風貌だった。遺体を赤麻呂たちの朝堂へ運び込んだところへ、
「
「
「知っているのか?」
と
「うむ。しかし、この者が手を下したとは思えぬ。謀られたのだろう」
「お前がそう言うのなら、それが正しいのだろう」
と言って、
「この事は他言無用」
と他の者たちに向かって命じた。
「御意」
と返事をして、その命に従う意思を示した。
「しかし、どう釈明する? この者は無断で宮廷に入って来た。しかも、この服装は、まるで間者のようじゃないか」
「お前ならどうする?」
と逆に質問した。都で役人として務め、博識でもある
「先ずは、この者の死因を調べよう。それから、どのようにして、この者が宮廷へ入る事が出来たのかを調べる」
「うむ」
と
「
と言って、二人を呼びに行った。
「
「うむ、お前たちに頼みがあるのだが良いか?」
と尋ねた。
「もちろんですとも。もう、この人たちは大丈夫です。あとは、安静にしていれば回復するでしょう。それで、
「着いて来てほしい」
と
「はい」
と返事をして、余計なことは聞かずに、
「
と彼の手を取り、
「この者の死因を調べて欲しい」
と蓆に横たわる若い男の遺体を指して
「分かりました」
「分かったのか?」
「内臓が潰れていて、吐血の痕がある。身体に外傷はないけれど、内臓に直接衝撃を与える術でもあるのなら、術者の攻撃による他殺です」
と
「うむ。口を封じられたのだろう」
「術者が死ねば、虫も死ぬ。この虫を作ったのは
「それならば、この者が下手人なのですか?」
「手を下したのは
と
「この者は、なぜ、
「それは、これから調べよう」
と
「
と尋ねた。
「すべて見回ったわけではない。ただ、この者が死んでいるのを見つけて運んできたのだ。捜索してすぐに見つけた。それも、解せぬがな」
「それなら、お前たちがすぐに引き上げた隙に、逃げた者がいるのだろう。現に、
「ならば、
「
と
「うむ」
「皆の者、この事は、くれぐれも内密に。
「御意」
その日の勤務を終えた
「
「お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
と泣きそうな顔で見上げて言った。
「うむ。心配かけて済まなかった」
「淋しい思いをさせてしまったね」
と抱きしめた。そんな二人を見て、
「
と赤麻呂が声をかけて、妻の
「
「
それを聞いた
「安全な所とは?」
と質問すると、
「お前の兄の居る
と
「
「分かりました」
と目を伏せて、
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