第59話
「さて、蛙。霊力がまだ回復していないようだな? 俺の霊力を分けてやろう」
と蛙に言うと、
『なぜ?』
と疑問が返ってきた。
「お前の霊力を奪ったのは人だ。人の成す悪の所業を俺は見過ごせない」
『面白い。お前のような人がいるとはな。お前の善意を受け入れる』
蛙は答えて目を瞑った。それを確認すると、
『お前に感謝する』
蛙はそう言って、頭を下げた。
「礼には及ばない。お前は人に利用され憂き目にあったが、人の命を奪わなかった。俺はお前に敬意を表する。そして、感謝している。お前を陥れた者の目論見通りにはいかなかった。また、何か仕掛けてくるだろう。お前は暫くこの屋敷に居るといい。式が家を建て替えているが、気にするな」
『うむ。お前の言う通りにしよう』
と
次の日、
「
「あの奇病の患者さん。皆、回復に向かっています。玄理様のおかげですよ。本当に、あなたがいてくれてよかった」
と
「おはようございます」
と
「
「俺の屋敷にいる。結界を張っているし、式がいるから安全だ。何かあれば俺に知らせが来る」
と答えた。
「それは良かった。蛙さんも難儀でしたね?」
「お前たちはここからしばらく出ないで。結界を張っておく」
「え? 急にどうしたんですか?」
「何があったのですか?」
と
「分からないが、何か妙な気を感じる。様子を見て来る」
そう言って、
そこには、
「
と
「うむ。お前は、他の者たちを守ってくれ」
そう言って、
「操られている」
「そのようだな。
と
「なんだ? あの者たちは、どうしたのだ?」
とざわついた。
「彼らに近付くな。
と、
「お前たち、少し痛いが我慢してくれ」
「さて、そこで見ている者たち、少し手伝ってもらえると助かるのだが。この者たちを中へ運んで欲しい」
「おや、おや。何事かな?」
と声をかける者がいた。高貴な身分を表す服を着て、口元を尺で隠し、部下を引き連れていた。
「
「我はお
と一言返した。
「お前の仕業か?」
「何のことだか?」
「この者たちに虫を入れたのはお前かと聞いているんだ」
と
「証拠も無しに、我を責めるとは。
と
「認めぬのなら、もういい」
と
「さあ、この者たちを早く中へ」
倒れた者を運んで、朝堂の中へ入っていった。
「
と頼んだ。暫くして、
「
「
「はい!」
「
と聞いた。
「毒虫を身体に入れられ、操られていた。だから、今から毒虫を取り出す」
と
「彼らの身体を抑えていてくれ」
と言葉を続けた。
「分かりました」
「
と
「駄目だ。この事には関わらない方がいい」
ときっぱり断った。術を使えない彼らを巻き込むわけにはいかなかった。たとえ身内であっても、
「この虫は俺が持って行く。この者たちの治療を頼む」
「
と
「うむ」
「
「騒々しい。我に何用か?」
と
「白々しい。あの者たちに虫を仕込ませたのはお前だろう? 今、宮殿内で下手人を捜索している。お前の手の者ならば、どう釈明する?」
「では、聞こう。お前が間違っていたら、どう釈明するのだ?」
「俺が間違っていても、謝る気はない。お前が無実なら、責める理由もない。ただ、それだけだ」
「ならば、我が無実と証明されるのを待とう」
と
「下手人を捕まえるまで、お前を都からは出さない」
「うむ。物部の屋敷で待っている」
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