第58話
「
「これも俺の役目だからな」
と笑顔を返した。
「さて、こいつの身柄はこちらで預かろう」
「いや、こいつは奇病の原因だ。今、その奇病の対処をしているこちらで預かる」
「そうか、分かった。もし、処遇に困ったら言ってくれ」
「
と、
「おはよう。この
「なんとも不気味な!」
「
「近付かないでくれ!」
皆一様に怯えていて、逃げ出す者までいた。
「まあ、皆さん落ち着いて。
と、
「さて、蛙よ。お前にもう一度聞く。なぜ都へ姿を現し、人の精気を吸ったのだ?」
「見ざる聞かざる言わざるか。ならば、その身体に聞こう」
「さて、もう一度聞こう。お前はなぜ都へ来たのだ?」
『連れて来られた』
と答えた。
「誰に?」
『人』
「何処の奴だ?」
『知らぬ』
「術を使う者か?」
『そうだ』
「なぜ人の精気を吸った?」
『失った霊力を補うため』
「霊力を失ったのはなぜ?」
『人の使う術で失った』
「お前を連れて来た者がやったのか?」
『そうだ』
「その者の目的は?」
『知らぬ』
「お前はどこに住んでいた?」
『山』
「お前を山に帰せば、人の精気を吸う事はしないと誓うか?」
『誓う。しかし、術を使う人が来たら、また同じ事をされる』
「その術者が誰か分かれば、俺が対処しよう。二度と、お前に術を使う事はさせないと誓う。お前は、人の命を奪ったわけではない。皆、精気を吸われながらも、まだ生きている。それは、お前が人の命を奪うつもりはなかったからだろう?」
『そうだ』
「ならば、罪に問うまでもない。お前の霊力を奪い、都へ連れて来たのは、混乱を招くためだろう。お前はそのために利用されただけだ」
「
「うむ。蛙の身柄は
「うむ、ありがとう。この妖の霊気が戻るまで、暫く俺が預かり、下手人を探す。この事について、他言なさらぬよう。術者に感づかれれば、この事を知っている者は攻撃を受けるだろう」
「私たちは関係ない」
「何も聞かなかった」
「何も知らない」
と彼らは口々に言って、目を覆い、耳を塞ぎ、口を閉ざした。そうして、見ざる聞かざる言わざるを呈するのだった。
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