第43話
食事を終えた時、近くで酒を飲んでいた男が、
「おまさん方はどこから来たがかえ? 今日の宿はお決まりやか? もし、まだやったら、ご案内致しますぜよ」
と声をかけてきた。
「それは助かります。弟たちも疲れているので」
と
「ほんなら、ご案内致します。どうぞ、ついて来とーせ」
と男が言って、他の男たちも一緒に立ち上がって、
「わしらは皆、同じ仕事をする仲間や。親方様の屋敷へご案内致します」
と先ほどとは違う男が言う。彼らは、みな肌が浅黒く焼けて、屈託なく笑顔を見せると、白い歯が光った。
「仙人さま、ここや」
と言ってから、屋敷の奥に向かって、
「親方様! 仙人さまをお連れした!」
と声を張り上げた。すると、奥から身体の大きな男がのっし、のっしとやって来て、
「お客人よ、よう来てくれた。仙人さまとの事けんど、こちらの招待を御受けして頂けたらうれしい。むさ苦しいところで、大変申し訳ござらんが、お客人を歓迎する宴も用意致しますき、お部屋でお待ちいただけたら
と
「恐縮です。こちらこそ、何のお役にも立てないのに、お言葉に甘えさせていただくには忍びない」
と
「気にする事じゃない。わしらは仙人さまのお姿を拝見出来た事、こうして、会話してもらえたことが正に幸運。そればあで十分ながや」
と
「ところで、おまさんがたはどちらから来たがかえ? そして、ここへは何をしに来たがかえ?」
と
「
と
「そうやったか。火の国とは、また、遠い所までいくのじゃのぉ? 理由は聞かん方がえいのですろうか?」
と
「うむ。理由は話せないが、一晩の宿を借りても良いだろうか?」
と
「もちろん、えいとも。仙人さまがお泊り下さるらぁて幸運や。
と
「少し寝ていていいよ。俺が傍に居る。部屋へは誰も入れないから安心して」
「おう!」
と
『分かった』
と
陽が傾きかけた頃、
「仙人さま、宴の準備が出来ましたので、どうぞいらしてください」
と家人が部屋の外から声をかけた。
「うむ、ありがとう」
「起きて、宴の準備が出来た」
すると、
『
と
「あっ、悪い!」
「大丈夫か?」
と気遣った。
『うむ、平気だ』
と
「良かった!」
と
「それじゃあ、宴へ行こう」
と声をかけた。
「おう!」
と
『うむ』
宴には多くの人たちが来ていて、たくさんの料理、そして、酒が用意されていた。ここへ案内した者たちもいる。
「仙人さま!」
男が嬉しそうに声をかける。宴の挨拶も早々に切り上げ、男たちは酒を酌み交わして、盛大に飲んで食べた。
「仙人さま方も、どうぞ、飲んどーせ」
と何人も来ては酒を酌み続けた。
「弟たちはもう飲めない。俺が代わりに頂こう」
とその分も飲む
「いごっそう、いごっそう!」
と褒め称えた。
「おまさんはまっことお酒が強いのぉ。まっこと気に入った!」
と男たちが陽気に言って、
「もう、おまさんはわしらの兄弟や!」
と楽し気に酒を飲み続けたが、さすがに飲み過ぎたようで、次々と限界とばかりに倒れるように眠った。最後まで起きていたのは
「げに、酒に強いのぉ。
と言って、豪快に笑った。
「ありがとう。もう遅いので、俺も部屋で休もうと思う。弟たちを部屋へ連れて行く」
と
「分かった。一人はわしが運びましょう」
と
「それでは、おやすみなさい」
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