第40話
「では、ご案内致します」
とにこやかに言う。
「うん」
「あちらがお宿でございます。さあ、どうぞ、いらしてください」
と男はにこやかな笑みを湛えて、
「うむ」
「いらっしゃいませ~!」
華やかな衣装を纏った美しい女たちが、
「さあ、こちらへ」
と彼らの手を取り、奥へと引き入れる。
「来たか」
狐の
「
と言った。
「誰だ? お前?」
「はははっ! 我を知らぬと言うか? まあ、無理もない。お前とは初めて会うからな。しかし、お前の気を感じたのは、
と狐の
「ん? ふし?」
『
「ん? こいつ、俺の父なのか?」
「お前の名を知っている事が、その証拠だ」
と狐の
『ふんっ! 父であることが本当だとしても、それに何の意味がある? 一度も会ったことがないというのに』
「死んだと思っていた我が子が現れたのだ、会いたいと思うのは当然だろう」
と答えた。
『ふんっ! 詳しい事情などどうでもいいが、何か企みがあるなら、容赦はしない』
と
「二人とも、少しいいかな? 俺は狐の話が聞きたい。
と言葉をかけた。すると狐の
「うむ。
と前置きをして、語り始めた。
それは今から二百年ほど前の事。狐は
「そうか。話は分かった」
と
「
と
「人でありながら、我らへ理解を示すとは、変わり者だな」
と狐の妖は口の端を上げて言った。
「うむ。そうかもな」
と
『ふんっ! だから何だ? 父と子で仲よくしようとでも言うのか?』
と不機嫌そうに
「まあ、そう言うな。今夜はここで宿を取ろう。そのつもりで着いてきたんだ」
と
「はははっ! 面白い奴だな。気に入った。ゆっくり休んでいけ」
と狐の
「ところで、
と急に不安そうな面持ちで聞く。
「ん? 母さんか? 元気だぞ! 色ボケ爺と仲良くしている。それが腹立たしいから、傍にはいられない。だから、こうして旅をしている」
と
「そうか! 生きているのだな?
と嬉しそうに言った。
「いいもんか! 色ボケ爺と睦み合っているなんて想像するだけで腹が立つ!」
と
「
と狐の
「俺は大人だ! 生まれてから二百年経つんだ!」
と
『狐、俺の誤解だったようだな。非礼を詫びよう』
と狐の
『
と言葉を続けた。
「ほう、そういうことか。分かった、お前に我が子を託す」
と狐の
「ん? 何の話だ?」
「お前の父が、お前の事を
と
「そうか! 分かった!
『うむ』
と
一晩、狐の
「それでは、行きます」
と
『機会があれば、また来よう。
と
「父、また来るぞ!
と
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