第38話
翌朝、朝食を済ませると、
「それじゃあ、精霊たちに会って来る」
と
「さて、ここにいる精霊たちよ、姿を見せてくれないか?」
『来たのだな? 待っていた。お前たちは何者だ?』
と女の声が答えた。そして白い靄が風もないのに流れて来て、
『我らに何用か?』
と尋ねた。
「お前たちに頼みたい事がある」
と
『頼みを聞けば、我らにどんな見返りがあるのだ?』
と女が聞く。
「お前たちが人に望む事があるなら、それを伝えよう」
と
『では、お前の望みを聞こう』
女がそう答えると、
「ありがとう」
と
『うむ。それで、我らが手助けをしたら、我らの望みを叶えるという事だな?』
と女が答えた。
「そうだな。ただ、お前たちの望みを、あの者たちが叶えられるかは分からない。お前たちの望みを聞こう」
『我らはこの地の草木、岩、水などから生まれた。それは人々の信仰と敬いがあってこそ。それが今は薄れている。我らの力はそれによって失われつつある。人々には我らを信仰し敬う事を望む』
と女が言った。
「うむ、分かった。それを皆に伝えよう。そのためには、お前たちが俺たちと共に彼らの前に姿を現し、彼らの手助けをする事を約束しなければならない」
と
『では、そうしよう』
と女は答えて袖を振ると、彼女の後ろには幾つもの精霊が姿を現した。
「行こうか」
集落へ戻ると、
「なんと! 仙人さまが本当に精霊様たちをお連れしている!」
と感嘆の声を上げた。
「
と
「そのためには、お前たちも精霊に恩を返さねばならない。ここに住む精霊たちを信仰し、敬いなさい」
と告げた。
「はい! もちろんですとも!」
「精霊様! 我らはあなた様方を信仰し、敬います」
と誓った。
『分かった。お前たちの望みを聞こう』
女の姿の精霊が言うと、
この広い農耕地では、女、子供と老人で作物を作っているが、人手が足りず、半分ほどが手を付けられず、収穫もその分少ない。それでも、与えられた農地の広さに課せられた税が取られ、彼らは食べる事もままならないという。その話しを聞き、
『そうか。分かった』
と女の姿の精霊が事情を理解し、彼らの為に何をするべきかを悟り、
『もう、案ずることはない』
と彼らに言葉をかけ、他の精霊たちに無言で視線を向けると、精霊たちは姿を消した。
『望みを叶えよう。お前の誓いを忘れるでないぞ』
と女の精霊は言って、彼女も姿を消した。
「
と
「夕べの食事、そして今朝の食事、俺たちの為にお前たちが我慢したのだろう。済まなかった。そして、ありがとう。俺の大事な弟たちが腹を空かせていたから助かった」
と頭を下げた。すると
「仙人さま! おやめください。我らは大丈夫です。食べられない日もあるので、慣れているのです」
と慌てたように言う。
「本当に感謝している」
と改めて笑顔で礼を言った。
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