第23話
「そろそろ、ここの
「何だと!」
といきり立ったが、
『もういい、下がれ。我に会いたいとはな。いい度胸だ』
そう言って、強い邪気の
『猫、俺が相手になろう』
「
「宿を探しているところ、その猫にここへ案内された。一晩、宿を借りたいのだが、良いだろうか?」
と
『そうか。あの者が猫であること知りながら、ここへ宿を借りに来たのか? お前に企みがあるのなら、容赦はしないが、ただ、宿を借りに来たのなら、泊っていくがいい』
「ありがたい。では、この部屋を借りよう。ところで、お前たちは人を食べないと生きていけないわけではないだろう? なぜ、人を食うのだ?」
と
『なぜ、それを聞くのだ? 人を食べるのを止めろとでも言うのか?』
と女が言う。
「お前は、あいつらの邪気を強めようとしているのだろうが、あまり感心はしない。このままでは、術者に退治されるだろう」
『お前が我を退治しに来たのか?』
と女が言う。
「そうかもな。だが、これ以上、人を食べないと約束し、街から離れるなら、これまでの事は咎めはしない」
『その言葉、忘れるでないぞ。もし、お前が約束を違えたなら、我は容赦しない』
と女が答えた。
「うん。それでいい」
「ところで、猫。俺たちをここへ泊めてくれるのか?」
と
『ふんっ! お前はのん気だな。歓迎はしないが、ゆっくり休め。誰にも手出しはさせぬ』
と女が呆れたように言った。
「お前、人の姿になっているのは、人が好きだからだろう? 人の街の近くに屋敷を構えたのも、人と関わりたいからだろう? 俺との約束を守るなら、人の街に行っても咎めない。もし、術者に退治されそうになったなら、俺と約束を交わしたことを告げろ。これを約束の証として見せれば、見逃してくれるだろう」
そう言って、
『うむ』
女は満足気に笑みを浮かべて、融けるように姿を消した。
「良いのか? あれをくれてやって?」
「ああ、構わない。猫が人を食べないと約束してくれたのだから。それに見合った礼をしたまでだ」
と
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