第12話
日が傾くまで歩き続けて、ようやく宿が取れそうな集落へと辿り着いた。
「ここで、宿を取りたいのだが」
と集落の者に
「あいにく、ここには宿屋はない。
その屋敷へと案内された。
「主様、旅の御方が宿を取りたいと言うので、お連れしました」
案内の男が言うと、従者が出て来て、
「こちらへどうぞ」
と敷地内へ通してもらい、
「少しお待ちください」
と言って、家屋へ入っていった。暫くして、先ほどの従者が来て、
「どうぞ、上がって下さい。主がお待ちです」
とようやく家屋へと上がることが出来た。
「よく参られた。旅をしていると申したが、その風貌を見る限り、どこかの仙人ではないか? 名を聞こう」
と主が言う。
「俺は
と
「この者は、俺の旅の仲間で、
と言葉を続けた。
「ほう、葛城氏か。高貴な御方が、この様な僻地を旅しているとは、何か事情がおありのようだな?」
主の言葉に、
「実は、先日の大戦後に、旅を始めたのです」
とこれまでのいきさつを語った。
「ほう? それは興味深い。そのような書物があるとはな。しかし、私のような凡人には不要なもの。だが、その話し、あまり他言なさらぬよう、気を付けなさい。欲を出すものが現れるだろう」
と主は
「はい。ご忠告、ありがとうございます。この話をあなたにしたのは、あなたが信用に値する人物であると思ったからです」
と
「ほう? 初対面の私を信用できるとは。なんともお人好しだな」
主が言うと、
「俺には人の霊魂が見えます。その色によって、感情を読み取ることが出来る。そして、悪意があるかも見抜けるのです」
と
「ほう? それは凄い。面白い話が聞けて楽しかった」
その時、料理が運ばれてきて、
「どうぞ、召し上がって下さい。白兎は何を食べるのかな?」
と主は
「青菜があればいいのですが?」
と
「青菜を持ってこい」
と従者に命令した。
「先ほどの話では、この白兎に友人の霊魂が宿っていると?」
主は興味深げに、
『何だ? この男は? あんまり、じろじろ見るなよ!』
と
「この者は、見られるのが好きではないので、あまり見ないであげてください」
と主に言う。
「そうか、済まなかった」
と主は謝って、気になる白兎から、少し視線を逸らした。その視線の先には
「
「ん?
「うん。ありがとう」
「青菜をお持ち致しました」
従者が青菜を持ってきて言った。
「ありがとう」
と
「ほら、
と白兎の口元に青菜を差しだすと、小さな口でむしゃむしゃと食べ始めた。
「本当に、お前は可愛いなあ」
『可愛いと言うな!』
と怒ったように言う。
「照れているのか? まあ、ゆっくり食べろよ」
と
『ふんっ!』
と鼻を鳴らして、再び青菜を食べた。
食事を終えると、従者たちが膳を片付けてその部屋を今日の宿として使わせてもらうことになった。
「ゆっくり休むといい」
主はそう言って部屋を出て行った。
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