第11話
翌朝、宿を出る前に軽く朝食を取り、三人は西へと向かった。
「
「俺にもそれは分からない。ただ、俺たちのいた都から不死の山までは
と
「ひょえ~!」
『なんだ? お前、まだ旅は始まったばかりなのに、もう音を上げるのか?』
と
「そんなわけがないだろう! ただ、驚いただけだ! 音を上げたなんて、ちっとも歩かないお前に言われたくない!」
「そうだぞ?
「そうだぞ。俺は偉いんだ」
「暑いな。少し休もうか?」
「ああ、気持ちがいい」
すると
「紅蘭、楽しいか?」
と
「おう! 楽しいぞ! 子兎も来いよ!」
と
『ふんっ! 俺の身体じゃ足が着かないのを分かっているだろう!』
「それなら!」
「一緒に遊ぼうぜ!」
と言って、小川の浅瀬に
「ほら!」
と手で掬った水をかけた。
『おい!』
と
「冷たくて、気持ちいだろう?」
「おお! 逃げたな? もっとかけてやる!」
『はははっ! 未熟者め! 俺の速さに追いつけないだろう?』
と、
「
静かに彼らの名を呼ぶと、彼らもその妖気に気が付いたようだ。遊ぶのをやめて、川から上がり、
「
と
「人が我を
とその
「そうだな。お前の言う通り、俺は妖しい奴だな。だが、お前を傷つけるつもりはない。ここはお前の領域か?」
と
「我は、この小さな川に住んでいる」
と
「そうか。ここで騒いで悪い事をしたな。少し涼ませてもらった。水が清らかなのはお前が住んでいるからだろう。知らなかったとはいえ、水を濁らせてしまった事は謝らなければいけないな。済まなかった」
と
「ほう? 人にしては礼儀を
「子狐は不死の山で出会って、旅の仲間とした。子兎は道中で譲ってもらって、俺の友人の霊魂を宿らせている」
「友人の霊魂か。何やら、複雑な事情を抱えているのだな? ここで出会ったのも何かの縁だ。お前にこれをやろう」
そう言って
「これには、清らかな水が入っている。喉の渇きを癒しなさい。その水はこの小川の水が生まれる場所から常に湧き出ている。いくら飲んでもなくなることはない。これからの長い旅に持って行くがいい」
と付け加えた。
「感謝します。貴方は水の神だったのですね? 無礼な態度を陳謝します」
相手が神であることを知ると、
「うむ、許そう。お前の名は何という?」
と水の神は尋ねた。
「
と
「うむ。覚えておこう。では行くがいい」
と言って、水の神はキラキラと水の粒となって消えた。
「水の神、何とも不思議な存在だったな」
「いや、いや。俺には怖い存在だ。あの妖しげな気で、俺は身体が動かなかったぞ」
と
『俺も、死者の霊魂だからな。あれの気は俺にもきつかった』
と
「俺に聞くまでもなく、お前たちの正体を知っていたに違いない。優しい神でよかった。怒りっぽい奴だったら、お前ら消されてたかもな?」
と
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