第10話
皇位継承の争いが発端の大戦のあと、各所に関所が設けられるようになり、通行時に身元の確認が行われた。
「通行手形はあるか?」
とぶっきらぼうに尋ねた。
「はい」
と
「いいぞ。通れ」
と一言言って、次の通行人の身元確認を始めた。関所を通ってしばらく歩くと、人々が往来する賑やかな街があった。関所が設けられる以前から、ここは旅人が多く立ち寄ったに違いない。
「腹が減ったな。何か食べよう。
「ああ、俺は何でも食うぞ」
と自慢気に言った。
「それは良かった」
と言って道行く人に、
「食事をしたいのだが、どこへ行けばいい?」
と尋ねた。
「ああ、それならほら。あそこで食べられるよ」
と指を指して教えてくれた。
「ありがとう」
「ここで食事をしたいのだが」
と店の者に言うと、
「ここは客で一杯だから、奥へどうぞ」
と案内された。一度、店から出ると、離れの部屋があり、
「ここでお待ちください。すぐに食事を持って来ます」
と言って店の者が戻って行くのを、
「ちょっと、あんた! 悪いが、こいつが食べる青菜も持ってきてくれ」
と
「あら、可愛いうさぎさん」
と店の者は笑みを浮かべて、
「青菜も持って来ますね」
と言った。
その部屋には寝台もあり、宿となっているようだ。
「今日はここへと泊めてもらおう。お前たちも疲れただろう?」
「ああ、そうだな。今日は気疲れした」
と
『俺も疲れた』
と
「今日はゆっくり休もう」
と二人に言った。
店の者が食事を運んできて、
「お待たせしました」
と卓上に料理を置いた。
「ありがとう。ところで、ここは宿もやっているのか?」
と
「はい。今夜お泊りになりますか?」
と店の者が尋ねた。
「うん。泊まらせてもらおう」
と
「畏まりました。では、どうぞごゆっくり」
と言って、店の者は下がっていった。
「良かった。宿を探す手間が省けた。
「お前、そんなに子兎が好きなんだな?」
子狐の
「ああ、大好きだよ。ほら、見てごらん。こんなにも可愛らしい」
と
「はっ! 可愛らしい? 俺からしたら、美味しそうに見える」
と
『ふんっ! 子狐め! 俺が元に戻ったら、お前を食ってやる!』
と息巻いた。
「まあ、まあ。仲良くしなさい。
と
『ふんっ!』
と二人が同時に鼻を鳴らして、そっぽを向くのを見て、
「お前ら、似た者同士だな」
と
「二人とも、大人しく待っていろよ。食器を片付けて来るから」
そう言って、
『まったく、減らず口な子狐め! 生意気にもほどがあるぞ!』
「なんだよ! 子兎のくせに、お前こそ生意気だ! 俺はお前より長く生きているんだ。年長者の俺の方が偉いんだぞ!」
と子狐の姿に戻った
『はっ! 長く生きていても、お前は親離れ出来ていないじゃないか! 母さんに甘えて、頭を撫でてもらっていただろう!』
「はっ! お前だって、
と
「お前ら、喧嘩をするなと言っただろう? 外まで聞こえていたぞ」
『だって、こいつが生意気だから』
と
「こいつが先に言ってきたんだ」
と
「分かったから。ほら、二人とも落ち着いて」
そう言って、
「
椅子に座っている
「お前たちは俺の同士だ。俺にとって大切な存在だ。だから、喧嘩はしないで。分かった?」
「いい子たちだ。さあ、疲れただろう? もう、陽も暮れる」
そう言って、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます