第9話
「子狐の件は、これで終わりとして、俺たちがここへ来た用件は別にある」
と
「俺たちは、ある書物を探している。蘇生術が書かれた物だ。ここにあるかもしれないと思って尋ねた」
と言葉を続けた。
「それはきっと、『
と
「それなら、それはどこにあるんだ?」
「それは、私も知らない。ただ、誰が書いたかは知っている」
「それは誰だ?」
と
「
「それじゃあ、老君には会えないということか?」
と
「そうだ。だが、お前が探している物は地上にある。老君の弟子が持っているかもしれない」
「その弟子はどこにいるのだ?」
と尋ねると、
「
と
「分かった。ありがとう」
「子狐、お前も一緒に」
と子狐に声をかけて、
「お前はここを去るか、今までのように麓に残るか。どうする? 俺たちは旅を続ける。ついて来るか?」
『ふんっ』
と鼻を鳴らした。子狐は白兎に敵意の籠った視線を向け、
「子兎が嫌がっている」
とぽつりと言った。
「
「こいつの事は気にするな。お前がどうしたいかを言えばいい。もう一度聞く。俺たちと一緒に旅をするか?」
「そうだな。ここに居てもつまらないし、まだ、お前にお礼をしていないからな。ついて行ってやるよ」
と意気がるように言った。それを見て、白兎がまた鼻を鳴らしたが、
「
と笑顔を向けて、
「子狐、よく言った。俺の名は
と子狐に聞く。名を明かした
「お前、それは本当の名か? 名を明かす意味を分かっているのだろうな?」
と子狐は言う。妖邪に名を明かせば、呪われたり、命を取られる。逆に、妖邪が人に名を明かせば、人に支配されるのだ。
「もちろん。俺はお前を同士とするのだから、本当の名を明かすのは当然だ」
警戒する子狐に対して、穏やかな微笑みを向けて
「分かった。お前を信じる。俺の名は
子狐が答えると、
「紅蘭、いい名だ。さて、紅蘭。お前は
と
「もちろんだ」
と紅蘭は答えて、瞬時に人の姿へ
「どうだ? 俺の変化は自由自在だ。恐れ入っただろう?」
と紅蘭は得意げな顔をした。
「うん。恐れ入った。それじゃあ、そのまま行こう」
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