第7話
「そうだな? お前の宝も見てみたいしな。仙人に、お前の母親を捕らえた理由を聞いてやる。そのあと、助け出すかは俺が決める」
と
「母さんを助け出さなかったら、俺の宝物はやらないからな! 宝が欲しかったら、母さんを連れて来いよ」
子狐は宝欲しさに、母を連れて来てくれると期待して言ったが、当の
『ふんっ』
と鼻で笑った。それを見て、
「なんだ? この小生意気な
と子狐は不愉快とばかりに、
「まあ、まあ。落ち着け。こいつの口が悪いのは謝るよ。だから、こいつを食うとは言わないで。俺たちは仙人に会いに来たんだ。お前の母さんの様子を見て来るから待ってろ。どうせお前はこの先には進めないんだろう?」
と
「ここに、子狐の母親がいるようだ」
『ああ、そのようだな』
「ところで、仙人の名は何と言うんだ?」
『
と
「そうか。分かった」
「お客人、遠慮なさらず、どうぞこちらへ」
と庵から姿を現した
「では、失礼する」
「突然、尋ねて不躾なのですが、そこの狐について、伺ってもいいだろうか?」
と
「これは、私が捕らえた。多くの人の魂を食べたのだ」
と
「そうか。それなら、捕まえることは正しい。だが、その狐には子がいる。子から母親を取り上げるのは酷なことではないか?」
「そうだな。しかし、子狐を置いてゆくと言ったのはこの者だ」
と
「では、聞こう。狐よ、なぜ我が子を置いていったのだ?」
それは百年ほど前の事。
そこまでの話を聞いて、
「なぜ、この山の麓に子狐が来たのに、会ってやらなかったのだ?」
その問いに狐は困ったような表情をして、
「それは、私がこの御方をお慕いしていることを、我が子に伝えるのが怖いのです」
と声を震わせた。
「そうか。お前は、この
「はい」
と狐が小さく頷いた。
「それで、
「そうだ」
と
「もう、いいだろう。子狐に会って話そう。今は分かってもらえなくても仕方ない」
と狐に言う。
「そうだな。いつまでも、このままではいられない。
そう言うと、
『それじゃあ、子狐を連れて来る』
と言って、山を駆け下りていった。
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