第6話
彼らが最初に向かった場所は、霊峰『
「この山が特別なのがよく分かる」
「これは、ここに住む仙人の仕業なのか? それにしては禍々しい」
『これは妖邪の気だろう』
と
「ここに住む仙人は妖邪なのか?」
『それはない。この山の仙人は名の知れた高位の修行者だ。邪に落ちることなどない』
と
「そうか? それじゃあ、ここには何がいるんだ?」
「はっはっはっ! 我を知らぬとは愚かな奴らめ! 我を恐れるなら、荷を捨てて立ち去るがいい!」
と少年のような若い声が言った。姿は見えぬが、この邪気を放っている者だと、
「元気がいいのはいいが、俺たちは、お前を恐れはしない。だから、このままこの山を登る」
そう言って、
「おい! こら! 待て!」
声の主が慌てたように追いかけてきて、ついうっかりと、その姿を見せてしまった。
「なんだ? 子狐じゃないか。こんなところに住み着いて、人を脅しているとは、感心しないぞ」
と
「なんだと! ガキのくせに生意気だぞ! 荷を置いてさっさと立ち去れ!」
と子狐が息巻いた。
「お前、俺たちと遊びたいのだろうが、俺たちには用事があるんだ。他の奴と遊べ」
「お前、そんなに遊んで欲しいのか? 俺も暇じゃないんだが?」
子狐は大きくて恐ろしい形相の鬼に
「ああ、悪い。怪我をさせるつもりはなかった。大丈夫か?」
と
「お前! 何者だ? 妖しい術を使うとは、怪しい奴め!」
子狐が言うと、
「怪しいのはお前の方だろう? ここで一体何をしているんだ? 霊峰不死の山だぞ? 頂上には仙人がいる。お前はそこへ近付けはしないだろう? それに、ここで悪さをすれば、仙人に捕まって消されるぞ」
と
「願ってもないことだ! 俺がここで悪さをして、あいつが俺を捕まえるのを待っているんだ」
と子狐が言う。
「お前、仙人に捕まりたいとは、どういうことなんだ?」
「よくぞ聞いてくれた。ここに住む、あの憎い奴は、俺の母さんを捕まえたんだ。だから、俺もあいつに捕まれば、母さんに会える。逃げ出すことは出来なくとも、俺は母さんとなら、死んでもいいんだ。せめて、もう一度、母さんに会いたいんだ。あの、にっくき、色ボケ爺め! 俺の母さんが綺麗だから、捕まえて放さないんだ!」
と己の事情を
「そうか。お前の母さんが、仙人に捕まったんだな。それは気の毒だ」
「ふんっ! 同情など要らぬ!」
と子狐は言ってから、少し考えて、
「お前、凄く強いな。俺の母さんを助け出してくれたら、俺の宝をやろう。どうだ?」
と
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