第5話
その日の宿に着くと、
「
「
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『まったく、お前という奴は。とんでもないことをしてくれたな』
と悪態をついた。いつもの
『おい! 何の真似だ! よせ!』
白兎の姿をした
「なんだよ? 久しぶりに会えたんだ。これぐらいいいだろう? お前だって嬉しいくせに」
『もう、それくらいでいいだろう? 俺も再会を嬉しく思っている。だが、これからの事を話し合うべきだろう? お前が何をして、これから何をするのか』
「ああ、そうだったな。俺がしたことをお前がどう思っているか、まずはそれも聞いておくべきだな」
『俺は怒っている』
「そうだろうな。お前の霊魂が天へ昇るのを引き留めたからな」
『そんな事じゃない。お前が葛城の家を破門にされたことを怒っている。もっと、上手く立ち回れなかったのか? 何も、お前が悪者になる必要はない』
それを聞いた
「はあ? お前、何を言っているんだ? 俺が悪者だって? そんなの表向きだろう。みんな知っている。俺がどんな奴で、身内をどれだけ大切に想っているかを。俺がこうしてお前を連れて旅をすることを、誰も悪いことだと思ってはいない。禁術も禁書も、誰かが使っちゃいけないんだったら、残しておく必要なんてないんだ。それがあるという事は、誰かがそれを使う事を望んだからだろう。悪意を持って使えばそれは悪となり、善意を持って使えばそれは善となる。俺が大切なお前の為に使うのなら、それは善だ。お前は何も気にすることはない。俺がお前を必要としている。お前をこの世に繋ぎ止めたかった。俺のわがままで、今、お前はこうして白兎になっている」
そこまで言うと、
『なぜ、そこで笑う?』
「いや、いや」
くっ、くっ、と笑いを堪えながら、
「お前がこんなに可愛らしい白兎になった事が」
また、言葉が途切れて、もう可笑しくて堪らないと、
『お前、俺が元に戻ったら覚えてろよ。笑ったことを後悔させてやる!』
と
「分かった、分かった。今日はもう遅いから寝ようね?
『黙れ!』
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