Ⅶ よぅ、のっぺらぼう。
第31話
「全員捕まえろ! 確保だ!」
突如、施設内に公安がなだれ込んでくる。それは、何もないところから姿を現したように、その場にいた
咄嗟のことで、抵抗しようと試みた
「あ……」
僕の目の前のディスプレイに映し出されるのは、二つの学園内の映像。
そして目の前では、まさに破壊された〈リモートウォーカー〉を操っていたパイロットたちがカプセルから引きずり出されては、拘束されていく光景が広がっている。鮮やかなまでの拘束劇。息もつかせぬ間におこった逆転劇に、僕は呆気に取られてしまった。
そんな僕の肩に手が置かれる。
「もう大丈夫。怖くなかったかい?」
「……お前」
何食わぬ顔でヘラヘラとしている
「僕を……囮に使ったな?」
「んー? なんのことだろう? たまたま目を付けていた人物が、たまたま目を付けていた学園の地下に、たまたま護衛していた重要人物を連れて行った。それを救出しただけだよ」
「白々しいぞ」
「まぁまぁ、怒んないでよ。それとも、
「――ッ」
「
「……お前は、嫌いだ」
「まぁ、お互いにビジネスライクで、今後ともよろしくね」
そして、
残るは一人。
その場にいた公安たちも、銃を突き出して睨み合いが始まる。
「彼が、逆さまの『太陽』? やぁ、はじめましてだね、
*****
*****
そう呼ばれた少年の銃口は、真っすぐに俺に向かっていた。追い詰められているのは確かで、カプセルから引きずり出される際にひと悶着あったのだろうか? 左腕の部分が破れて、素肌が露になっている。
刻まれているのは、特徴的な火傷の痕。普通なら晒すのを憚られる少しグロテスクな見た目だ。だが、彼は頓着する様子はない。かといって、ここにきて彼の瞳のなかには、恐怖もなければ、戸惑いもない。
敢えて言うならば「疑問」くらいはあったと思う。冷静に、冷徹に、ただただ静かにこちらを見つめている。
「これはどういうつもりだ、
もう、化ける必要もないだろう。
俺は変装を解いて、
「そうか……。どうやら、俺は見捨てられたようだな。それともハズレを引かされたのか?」
「あはっ! いやぁ、ごめん、ごめん! でも、
場所は上空。砂嵐のようなノイズが走ったかと思うと、
そんな反応をよそに
「ありがとう、
何を言っているんだ……と、困惑するなか、
「うそ……」
その映像から最初に異変に気が付いたのは、
動いているのは、すでに魂を失ったはずの空っぽの機体。パイロットだった人は拘束され、
「ほんとナイスだよ、
言葉を聞かずに
やがて、操作権を取り戻したのか、映像に映るうちの一機は活動をやめて母船へと収納される。しかし、時すでに遅し。引き渡されたキラー衛星は
「これで、あとは宇宙ホテルにくっつけるだけ! 宇宙ホテルとのエンカウントまでは、あと二時間! あとは自動で――」
「させるな
「簡単に言うな! できればもうやってる!」
さすがの
目の前のカプセルがどういう代物かは、
「
「もうやってる!」
実際、映像のなかでは〈アストラル・クレスト〉側から伸ばされたアームが、
映像を見て、当面はなんとかなりそうかと少し安堵の表情を浮かべる
そんなことを思っていたに違いない。
だが俺は、
「それじゃあ始めよう! 前夜祭の始まりだ始まりぃーッ!」
俺は嫌がる
何よりも。
先ほどから俺に向けられる
「離せ! 何のつもりだ!」
「分かんねぇ! 分かんねぇけど――」
逃げなきゃ。
そう思った。
いまも背中には、
俺には代わりがいるから、と。
目指すべき自己像なんてものもない。だから、目的も無いから手段も選びようがない。もし目的を与えてくれるのなら、忠実にそれをやり遂げる。とにかく、目の前のことに集中できてしまう人物。
だから――
「――自爆くらい、してみせるんじゃないかって」
そして。
花火が炸裂した。
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