第18話
「よろしく頼むよ」
「これは運命の分かれ道を示している。お前から見て一番手前のカードが、いまのお前の状態を示したカード。左の道がお前の言う容疑者を捕まえようとした時に訪れる未来。右の道が静観した時に訪れる未来だ。それぞれ、手前がその選択肢の性格、奥が選択をした結果だ」
「なるほどね。もう一枚は?」
「これは、私の個人的な興味だ。お前が追いかけている人物像を知りたくてね」
言いながら
「お前が追ってる人物……どうやらアタリのようだな」
「やっぱりかい?」
「だが……まだ少し分からないな」
いったい何を読み取ったのだろうか?
「『
独り言のようにつぶやく
「
「……流石だな。ご名答」
それはよく聞く名前だった。
そのうちの一つに白いフードを被った人物がいる。見えているのは口元だけで、表情はおろかどんな顔かたちをしているのか分からない。撮られた画像データも荒い。ただ、本名かはともかく、「
「こいつは……」
だが、俺はそいつを見るなり、自分でも分かるほどに心拍数が上がっていくような感覚を覚えた。俺はそいつのことをよく知っていたからだ。思い出されるのは、無惨な光景と、白い衣を身に纏い数多の死骸のなかを周遊する姿。手にはハンドガン。そして、銃口を標的に向けては、冷徹な声を響かせる。
――
俺の夢に出てきた少年だ。
*****
「その調子なら、居場所も分かりそうだね?」
「知らないな。むしろ、私が教えてほしいくらいだ。……いや、もう掴んでるんじゃないのか?」
「察しがいいね」
「大アルカナ8番『
「物騒だな。ただ、平和を乱そうとする奴らが許せないだけだよ」
「どの口が。いつも邪魔ばかりするくせに。私としては静観する未来を選んでほしいんだが」
右側の道が示される。
手前は『
奥は『
「そらみたことか。静観は柔軟な選択肢だと告げている。内省することこそ重要で、そこから得られるものがあるとな。悪くない未来だ。いいや、むしろ理想的な未来だと思うけどね」
「なるほどね。じゃあ、残虐非道なテロリストである
「私が気に入らないのは、お前らのやり方だ。特に、お前みたいな嘘つきの恥知らずは、正義云々を語る前に自分の腐った性根を叩き直せ」
「それ、もしかして自分に言ってる? 重要なことを隠しているのはお互い様だろ?」
「お前のそういうところが嫌いなんだ」
そして、左手前のカード――もしも容疑者を捕まえるためのアクションを取ったらどうなるのか。カードをめくって現れたのは、八本の杖が勢いよく空から降る絵柄。『
「急激に物事が動き始める、だそうだ。そうだろうな。お前らはいつも要らないことしかしない。事態をややこしくするだけだ」
「いいね。で? その結果は?」
最後に残ったカード。
それが見たいんだと、
一方で、
「君にとっては……なんだか、よくない未来みたいだね。
「どうだか。お前にとっても望ましい未来かは分からんぞ。なんたって『急展開』のあとに迎える未来だ。混乱や破滅が訪れるのは当然といえば当然のこと。人によっては良いかもしれないし、悪いとも言えるかもしれない」
「結果に責任は持つよ。僕の未来だ」
「口だけは達者だな。ペテン師め」
開かれたカード。
それを待っていたかのように、翳っていた太陽が顔を出し、店内に光が蘇る。そして差し込む光が照らし出したのは、白馬に乗った死神の絵柄――大アルカナ十三番の『
「へぇ……どちらの未来も大アルカナなのか。それにしても『
悩み始める
マットに開かれたカード。
『
「……デス……ハーミット」
それは奇しくも、交換日記の相手が使う名前だった。
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