第9話
「ん? これはこれは
丸メガネを縁を掴んでクイッと持ち上げる
氏を添えるのもなんだか嫌らしい。それでフランクさを演出して、生徒との距離を縮めているつもりなのだろうか。
つい苛立ちが言葉に乗る。
「なんです?」
「おっとっと。そう怒らなくていいじゃないか。放課後に二人きり。青春。とてもいいねぇ。――と、邪魔して申し訳ないんだけれど。頼みたいことがあるんだ」
「だから、なんです?」
「いやぁ、正確には君への頼みじゃなくて、
「は……はぁ……」
「流れ星を見せてほしいんだ! 学園祭の日に! 君たち〈アストラル・クレスト〉ならできるだろう?」
*****
話はこうだ。
時を同じくして、市の方から高校と企業のタイアップで町おこしに繋がる何かして欲しいという案件が浮上したという。
それで、ちょうど困っていたところに一つのニュースが舞い込む。それは、夜空に流星が降る様子。そして、それが〈アストラル・クレスト〉なるベンチャー企業によるスペースデブリ除去の活動だと知った。しかも、〈アストラル・クレスト〉を運営しているのは、自分がいる
「けれど、
袖で顔を覆う
俺はというと判断しかねていた。話はやたら長いし、
逆に、
「ボクが思うに、これは
「……それは……確かに? でも、俺が言ったところで、引き受けてくれる保証はないですけど」
「いいや! 同じ生徒という立場の君が頼めば、なにか変わるかもしれない。それに、君は彼女のお気に入りみたいじゃないか。なんったって、授業中に来て連れ出してしまうくらいだからね」
お気に入り。
その言葉に、咄嗟に俺は
「このプロジェクトには、市も、教職員も、生徒会のみんなも期待している。あとは、
「ひゃく……」
「けれど。成功しているからか、あるいは家柄のよさに驕ってしまっているのか、いまの彼女は増長している節がある。もし、それで天狗になってしまっているんだとしたら、今後の
差し込む夕日によって、赤く照らされる
「本当かい! じゃあ、よろしく頼んだよ! よしよし。これで、今年の学園祭は大成功すること間違いなしだ!」
*****
「――どこにいるかと思えば。悪い虫につかれてるじゃないか、先輩」
黄昏。
伸びた影の向こう側から、夕風に乗って声が聞こえてきた。足音と共に近づいてくるセーラー服の少女。彼女は、俺を見つけるとニヤァと嬉しそうに笑みを浮かべる。そして、タレ目から向けられる挑発的な視線が、俺の体温を下げた。
「
「おお、
「え……あ……え?」
「ほら、言いたいことがあるんだろう?」
ドンと、背中を押される俺。
よろけながら前に進み出ると、
「なぁ、
「下の名前で呼ばれてるんだな、
「いや……それは勝手にあいつが……」
「ふふっ。まあいいさ。それで頼み事かな? 奇遇だな。実は私も先輩に頼み事があったところだ」
「?」
小柄な
「まず、あのアホとは関わるな。自分の身だけじゃなく、世界が滅びるぞ」
「……」
「それから今夜、一緒にホテルでディナーでもいかがかな? ――見返りにデス・ハーミットのヒントを教えてあげよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます