第6話
地球に戻って来た俺は、見事に転倒した。
実際には、流体のカプセルから出ただけ。それだけなのに、途端に重力に襲われては、バランスを崩してその場に倒れ込んでしまった。立とうとするが、鉛のような
「大丈夫ー?」
てってってーと駆けて来る
実際に触れれば、俺よりも小さい肩幅に、細い腕。単純な身体的な能力では俺の方が勝っていそうなのにと、半ば不満そうにしているのが伝わってしまったのだろうか。「誰でも最初はそうだって」「慣れだよ慣れ」と言われた。
「それよりも、
「え? そうか?」
「もしかして、宇宙経験者? って思いたくなるくらい動けてたんだけど。なんかやってた?」
「いや……そんなことは」
運動ならバスケ。あとは、夢で何度か宇宙に行くことがあったから、イメージトレーニングができていたかもしれない……なんてのは少し馬鹿げていて流石に口にはしなかった。それにイメージと実際はやはり違う。いいや、俺が経験したのは正確には拡張現実なのだから、それを実際と呼んでしまうのも良くないかもしれないが、それにしたって思うように動けていたとは言えない。
「俺の実感としては、なんとか
「そんなことないって! 初めてとは思えないくらい様になってたよ。――ねっ、
椅子へと案内される俺。そこへ、
「ああ。正直驚いたよ。……本当に経験者じゃないのか?」
「? なんか、やけに高評価だな?」
「高評価もなにも、満点だ。運動神経はいいとは思っていたが、初めてでこんなに動けるとは……。それこそ、君になら安心して仕事を任せたくなったほどだぞ」
「……?」
帰ってきて、転んで。それで
それよりも、宇宙で思い通りに手足を動かせたことに、感心しているようだった。どうやら、大抵は〈リモートウォーカー〉を思い通りに動かすことすらなかなか上手くできないらしく、少し宇宙遊泳をさせたのちは宇宙船に固定し直して宇宙観光を楽しんでもらう……というのが当初のプランだったらしい。
それなのに、俺は
そして、なによりも
「なあ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます