第2話
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【四月十一日】
不思議な夢を見ました。
宇宙にいる俺が、オペレーションをこなすという夢です。
宇宙船の外には地球が見えたから、どこか遠い場所ではなくて、宇宙ステーションとかがある高さだと思います。
具体的なオペレーションの内容は覚えてません。ただ、船外で活動していたので、修理とかだったと思います。多分、そんな感じのことです。
こんな夢を見たのは、きっと、宇宙ホテルが開業したというニュースを最近見たせいでしょう。でも、宇宙遊泳をする気持ちを味わえて、なんだか楽しかった。
もし、本当に宇宙に行ける日が来たら、行ってみたい。
コスモス
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*****
「とまあ、君の願望はこの通りだが――」
「いちいち音読するな! 返せ!」
俺はひったくるようにしてノートを取り返す。
それでも、
広々とした後部座席で、向かい合わせに座る
「てか、なんで交換日記のこと知ってる? マジでふざけたことしやがって……明日からどうしてくれるんだ」
「おや? もう明日の心配をしているのかな? それに、禁書コーナーでおかしな挙動をする人間は、初めからおかしな人間判定されているんだ。いまさら取り繕ってどうする?」
「……見てたのか。いつから知ってた? ……いや、どれくらい読んだ?」
「面白く拝読させてもらったよ。すっかり君のファンになってしまうほどにはね」
くつくつと笑う
同時に、こんなことに巻き込んでしまった交換相手への申し訳なさが込み上げて来る。交換日記の存在がバレてしまったのは、警戒を怠った俺にも責任がある。
交換相手が誰なのかは分からない。ただ、交換日記の相手は、一人称を「僕」と名乗っていて、男性を演じているようだったが、書き振りから何となく女の子なんだろうなとは思う。いずれにせよ、こんなことに付き合ってくれるのだから、きっと根が真面目な人物だ。
そんな人の期待を裏切ることにもなってしまった。いまごろはもう、俺が交換日記をやっていたことは、学園じゅうで噂になっているハズだ。交換日記の相手も、相手が見えないからこそ楽しんでいてくれていたのかもしれないのに……。ファンを名乗るこの人でなしによって、全部台無しにされてしまった。
「なにがファンだ。他人のやり取りを盗み見して、楽しんでたの間違いだろ。
「日常に退屈していたのは君の方だろう? ……いいや、お互いにと言ったところかな。本当に読んでいてドキドキしたよ。いつだって続きが気になって仕方がなかったものさ」
「続き……ね。まぁ、お前のせいで、もう無いんだけどな」
俺は皮肉たっぷりに答えてやった。
何が続きだ。ふざけるな。こんなことになってしまった以上、もう続けることなんてできない。壊れてしまったものはもう戻らない。もし、相手が続きを期待していたとしたら申し訳ないが――いや、そんなことあるハズもないか。お互いに、もう続けることなんてできないだろう。
――全部、お前が蒔いた種だ。残念だったな、と俺は
「…………え?」
と。
俺の目に飛び込んできたのは、呆気に取られたと言わんばかりの表情を浮かべている
「続き……やらないのか?」
「?」
「そ、そうか……そう……か。……うん。やりはじめたのは
「? お前は、何を言ってるんだ? お前のせいで終わるんだぞ?」
「……う、うん。で、でもだな。もう少し考えてみないか? ほら、相手は続けたがっているかもしれないし……」
「お前に検閲されてるのにか?」
「……そ、それもそうか。……で、で、で、でもだな。一方的にやめるのは、相手に悪いんじゃないか? 先輩に乗ってもらいたい相談とか、話したいこととか、もっと色々あるかもだぞ?」
「知らねぇよ。そんなに言うんなら、お前が責任持って相談とやらを肩代わりすればいいだろ?」
吐き捨ててやった。
対して、
しかも、「乗ってもらいたい相談があるかも」などと、あたかも筆者を代弁するかのようなことを言い出されては、お前は何様なんだと思う。きっと、日記を盗み見するうちに、当事者のことを分かり切った気になってしまったのだろう。やり取りがバレてしまった以上、相談どころではないのだ。コイツは、とことん人の気持ちが分からないのだなと、俺は怒りを通り越して呆れ始めていた。
「……でも」
「くどいぞ」
「仮に、仮にだ! もし、その子が、やり取りを続けたいと言ってきたら、どうする? それに、突然やめたら相手も困るんじゃないのか? それに、それに……」
「……いや、なんでお前が必死なんだよ」
「それは……、私は先輩のファンだからな」
「……意味が分からねぇよ」
なにが言いたいのか、まるで分からない。どうやらコイツは、そもそも意思疎通が困難な相手らしい。
とんでもない相手に目を付けられてしまった。こうなってしまった以上、無駄な抵抗はせずに流れに身を任せた方が賢明かもしれない。ならばと、呆れとも諦めとも分からない溜息を吐く。
「……まあ、相手が続けたいって言うんなら、続けるんじゃないのか?」
やや投げやりに、返答するだけ返答する。
と。チラリと
弾けるような笑顔。お前、そんな顔できたのかよと、俺の目も見開かれる。それから、「そうか……そうか……」と満足そうに僅かに紅潮すると、もじもじとする。変な奴だなと思いつつ、俺たちの書いたものに対してそこまで楽しみだったのかと少しだけ気を許し始める自分がいた。
いや、二度と見せる気はないが。
*****
「――と。話が逸れてしまったな」
先ほどまでの表情をしていてくれれば可愛らしいのにと思いつつ、再び降臨した悪魔から逃れるように、俺は僅かに視線を車窓の外へと逸らす。見れば先ほどとは打って変わり、緑が多くなってきている。高速道路からも降り、山中へと向かっているようだった。
「私は、
「会社? なんの?」
ふふんと鼻を鳴らし、空をなぞる
すると、宙にディスプレイが出現する。映像を投影して、何かを見せようとしているらしい。と、風が吹きこむようなアニメーションののち、鮮やかな青をベースとするホームページと思しきサイトが現れた。目に留まるのは、星座を繋げたようなデザインのロゴ。その横には――
「――〈
その名前に俺は息を呑む。
ホームの写真として採用されているのは、夜明けを迎える地球を背に、人工衛星が飛んでいるイメージ画像。あくまでイメージ画像であることには変わりないが、実際にいまもどこかの遥か上空で稼働している人工衛星に違いなかった。
〈アストラル・クレスト〉と言えば、宇宙関連のニュースを見ていれば、一度は聞いたことのある存在。最先端技術と衛星の運用実績によって一躍有名になった新進気鋭の宇宙開発ベンチャー。
そして。
いま目の前にいるのは。
「おっと、そう言えば紹介が遅れていたね。――私の名前は、
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