最終話ですわ
その後のリディアの活躍は、語るまでもなかった。僅か10年でアーセルス王国やオーシェイ連邦、魔族領まで併合し、強大な帝国を築き上げたリディアは、ハイン王国を含む幾つかの旧ロウレット帝国領には手を出さなかった。
その地域はクヌート教を国教とする、マリアがトップの共産主義国が樹立したからだ。マリアの最大の支援者はリディアであり、リディアは裏切りを心待ちにしていたが、リディアからの支援が途絶えた瞬間に息絶える国に裏切る力はなかった。
世界にナロローザ帝国とクヌート教国、2つの国家しかなくなったが、この2つの国は奇妙な共存繁栄をしていく。ナロローザ帝国から追放された人間が行き着く先、そこがクヌート教国となったが、狭い地域に人口が密集する地域となったため、常に貧困で苦しんでいる。
しかしクヌート教国の上層部は、ナロローザ帝国からの献金でそれなりに豊かな生活を営んでいた。無能を追放していくナロローザ帝国は大陸統一国家とはならなかったため、仮想敵国が常にいる状態であり、追い出し先があるということは腐敗や内乱を防いだ。
しばらくすると、リディアは子を儲けた。出産は全て順調だったため、想定外の苦しみ等はなかったが、それでも出産の痛みが癖になったリディアは封臣達の中で王となった者の近縁者を婿として迎え入れ、4男2女の子供を作る。
全員が父親違いの子供であり、将来的には間違いなく兄弟で争う状況になるだろうとリディアはほくそ笑んでいたが、リディアにとって残念なことに兄弟仲はとても良く、長男を中心に領土を分割されて与えられた後でも協力し合って領土を繁栄させた。
更に長い時が経過し、リディアの孫も産まれるが全員が健康そのもので、子や孫に先立たれる不孝すらリディアは味わうことが出来なかった。この頃になるとリディアの唯一の願いは極力苦しんで死にたいだけだったが、老人になっても病気や怪我には縁がなかった。むしろ亡くなる前年が一番強かった。
女神の呪いは結局解呪出来ずに、リディアは破滅しなかった。最も、破滅するのが第一希望なだけで絶対に破滅しないと嫌だというわけではないリディアは、不満足そうな顔をしながらも皇帝として、隠居した後は上皇として好き勝手生活をしていた。
96歳になり、急に身体が動かなくなってきたリディアは孫達に見守られながら亡くなった。既に皇帝の座は息子へ、そして孫へ移っており、実権のほとんどを手放したリディアは晩年、ひたすら帝国内を練り歩き、役立たずや犯罪者を見つけては追放していた。しかし復讐に来る者は誰一人としていなかった。
そして最後の最後まで反乱や内部分裂を望んでいたリディアの祈りは反転して届き、リディアの死後も300年間ナロローザ帝国は平和だった。この平和は300年後にナロローザ帝国が分裂するまで続き、その礎を築いたリディアの名は歴史書に聖君として書き記された。
リディアの望んでいた暴君扱いは、一瞬たりともされなかった。
300年後、分裂を始めたナロローザ帝国はその中の1つの王国であるレイナール王国が戦争を始めて荒廃が始まる。やがて戦乱の世になったのを纏め上げるのは、1人の農奴の少女だった。
※あとがき
これにて「追放系お嬢様」は完結です。これまでたくさんのフォローや評価、感想をありがとうございました。完結出来たのは読者の皆様のおかげです。
このあと番外編として小話などを投稿するかもしれませんが、前に完結後のあとがきで同じようなことを書いて結局書いていないので、今後この作品が更新されるかは不明です。
作者のファンの方がいるか分からないのですが「追放系お嬢様」は時系列的には小説家になろうの方で投稿をしている「ガチの中世って分割相続制なんですね……」の後の話です。
次回作のアンケート等をやっているのでよろしければX(Twitter)のフォローお願いします。⇒https://twitter.com/instantnoumiso
改めて読者の皆様、ここまでの読了お疲れさまでした。最後に評価を付けて下さると非常に嬉しいです。また次回作や他の場で会えることを楽しみにしています。これまでありがとうございました。
↓次回作
追放系お嬢様 インスタント脳味噌汁 @InstantWriter
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