第55話 勝利ですわ
女神に転移のための魔法陣をセットし、無事に追放出来たところで私は意識を失いましたが、どうやら生きているみたいですわね。女神の触手が腹部を貫通した後、全身に激痛が走る毒を流し込んでいたのでひたすらに幸福な時間でしたわね。
目を開けて起き上がると、ダンジョン最奥の小部屋はほぼ全員が倒れていますが、全員生きているみたいですわ。流れ弾で死んだ人がいないのは全員が優秀だった証ですわね。
「起きたか。あれだけの出血量で生きているのは最早化け物だな」
「……私達、女神に勝ちましたの?」
「大勝利だ。死んではないだろうが、二度と戻っては来ないだろう」
ガルロンは女神が二度と戻って来ないと言ってますが、女神が戻って来る可能性はありますわよね?記憶を消しただけですし……。
というか、私の身に纏わりついてる黒い靄みたいなものは何ですのこれ。ガルロンやメイに聞いても何も見えないようですけど、女神の怨念みたいなものがずっと漂ってますわよ。
「……リディア、一回本気で1以外を望みながらサイコロを振ってくれ」
「良いですけど、何かメリットはありますの?」
「1個でも1以外が出たら全身に激痛が走る魔剣を作ってやる」
「振りますわ」
ガルロンが5個のサイコロを渡してきて、1個でも1以外が出たら魔剣を作ると言ってますが、これ確率的に言えば1/7776以外は魔剣を貰えるということですの?何故そのようなことを言い出すのかは謎でしたが、5個のサイコロを振ると1が5個でましたわ。あり得ないですわ。
……そしてガルロンから説明を受けますが、この女神の呪いというものは転生者にかかっていたものとのことで、私に今かかっているものは今まで転生者にかかっていたものよりも凶悪だと言われますわ。思い通りにならない呪いというのは、かなり厄介ですわね。転生者達が挙って女神を殺そうとしたのも納得ではありますわ。殺せませんでしたけど。
ということは、私が女神の帰還と復讐を望む限り女神はこの世界に戻って来られないのでは……?
「それでは『女神はこれで死んで復讐も来ない』と正反対のことを望んでも、心の奥底の方の意図が反転しますわよね?」
「女神が生きて戻って復讐しに来ることを望んでいれば、無駄な努力だな。
……マジでそういう奴なのか」
「……く、ここでガルロンに性癖を見破られてそれを盾に取って脅されることを望んだらダメですのね」
「俺は解呪されているようだし正直に言おうか。感謝もするし謝礼もするが、これ以上関わりたくはない……」
しかし全部が全部反転するようではないようなので、いずれ対抗策が出来る可能性はありますわ。そもそも、全ての望みが反転するなら私も気づいてますわよ。転生者を苦しませるための思い通りにならない呪いは、恐らく長期的な望みほど反転しやすい性質を持ってますわね。
とりあえず身体が毒や女神の残滓に侵されていないことに落胆しつつ、他の人も起こしたり回復させたりして、ダンジョンから脱出しますわ。女神産の魔物がこれ以上増えないことは確定したので、今の内に一掃して帰ることになりましたけどもはや消化試合ですわね。
存在を消す天使にも出会いましたが、デプハスションの光線で相手の光線を呑み込めるので苦戦はありませんでしたわ。何だかんだ言って、魔剣の中で一番火力が高いですわね。ガルロンによると数十人単位で絶望させて自死に追い込まないと1発も光線を撃てないようですが。
ダンジョンを出た辺りで解散となり、とりあえず領地に戻りますが、珍しい客が来ているとのことなので対応するとリンリン教の教祖マリアが邸宅に来ていましたわ。久しぶりにマリアに会ったので、まずは女神を殺したことを伝えると、かなり喜んでいましたので呪いのことはマリアも知っていましたわね。
「ところで、女神の名前とか分かりますか?」
「メルトが確か、女神の名前はクヌートと言ってましたわ。女神だけあって美人でしたわよ。『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』みたいな鳴き声しか発しませんでしたけど」
「私が行っても足手纏いは避けられませんでしたが、一目見てみたかったですね。
……では、私の名前はマリア=クヌートに改名しますね。リンリン教もクヌート教に改名します」
「……名前すら奪うのですか。まあ止めませんけど」
ナロローザ帝国から無能を追放したら、隣国のハイン王国は人が増えますわ。そこでリンリン教……クヌート教信者は数を増やしているのですが、最近は援助の額がとても足らないと懇願してくるようになっているので上手く回ってないですわね。
いつか革命してくれるのを期待していましたが、それも恐らく起きませんわ。マリアは恐らく、ナロローザ帝国のサンドバッグになる道を選択するようですし、その覚悟も決まっているようですわ。……転生者の思い通りにならない世界。それでも私は、破滅の未来が訪れるよう頑張りますわよ。
※あとがき
次話最終話です。
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