それは、おそらくどこにでもあるような想い出話…か?

茶ヤマ

1

”さあ、イタイ話をしようじゃないか!”


黒歴史。

それは『∀ガンダム』に出てきた太古に封印された宇宙戦争の事ではない。

「恥ずかしくて、人に触れられたくない、できればなかったことにしたい過去の言動」である。


ここに数十枚のルーズリーフがある。

これに書かれた文字列は、12歳~13歳の時に私が書いた「おはなし」である。

昨年、実家の私の部屋の押し入れから発掘し、親兄弟に見つからぬよう密かに廃棄すべく持ち出してきたものだ。


内容はと言えば、孤児院育ちの幼馴染の少年二人。

片方は明るい性格で面倒見がよくリーダーシップもある。

もう片方は、いつも幼馴染の背中に隠れているような引っ込み思案で、幼馴染を頼りにしている反面、その性格が羨ましくて妬ましくも思っている。

で、引っ込み思案の方が階段から落ち、頭を打ったことにより超能力発動。

それで自分が偉くなったつもりになり、幼馴染に反目していく。


そこに、突如、風の妖精らしきものに導かれた少女が現れる。

主人公はこの少女。

異世界転移でその二人の前に現れた少女は、超能力を持った少年と仲良くなり、素直になれない少年の代わりに奔走し、風の精霊の力を借り、少年たちは仲直り。

そして少女と超能力少年は両想いになりましたとさ。


という…。

あらすじ書いてて吐血しそうだ。


これは、アニメ映画にもなった某漫画を下敷きにした「おはなし」である。

今風に言うならば「夢小説」になるのだろう。

昔はそんな名称はなかった!なかったんだよ!○十年も昔だから!

キャラの名前は全部違うものではあるが、そこかしこに某漫画の風景を一生懸命文字にしようとしていた。

がんばったな、12歳の小娘。


私は、10歳にならぬ頃から空想…いや、あえて「妄想」という言葉を使おう…読んだ童話、小説、漫画を元に妄想を繰り広げる癖があった。

明智探偵事務所の少年探偵団の一員として西に東に駆け回って小林少年に「よくやった!」と褒めてもらえたり。

ドン・ドラキュラのいる練馬で、ワラバイさんからチョコラたちを守ったり。

二本足で立って歩く猫たちがいるアタゴオルの森でヒデヨシをからかって遊んだり。

そんな妄想の一つであり、「おはなし」として文字に残したものの一つが、数十枚に渡る「おはなし」だったわけだ。

妄想の一部を羅列しただけで緑の吐しゃ物が出てきそうだ。


これだけなら、ほんのり黒歴史で済むかもしれない。


これをクラスメイト(とはいえ故郷は田舎すぎるため、一学年30名にも満たない一クラスしかなかったから同学年と言うべきかもしれない)に押し付け読ませまくって、無理矢理感想を言わせていた。


うん、思い出したらエクトプラズムが出てきそうだ。


どんだけ自分の書いたものに自信があったんだ、12歳~13歳の時の私。


今よりも承認欲求と自己顕示欲が酷かったんだよ。


それをここに公表することで供養とさせてもらえたら…いや、恥を広めまくってるだけなんだけれどもね。

まあ供養の一環と無理やり思う事にする。


そんな人間である私が「夢の中で夏目漱石が言ってた」とか「実は先祖の記憶があって」とか「産まれた時にあまりにか弱くて、生き残るために3歳まで別の名前を付けられて死神から目をそらそうとしてもらっていた」とか吹聴してたのは、また別のお話……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

それは、おそらくどこにでもあるような想い出話…か? 茶ヤマ @ukifune

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画