『クレア・オーディエンス』

天狗倒し

 カーーーーン・・・カーーーーン・・・カーーーーン・・・・・・

 ミシミシミシ・・・パキパキパキ、バリバリバリバリ!・・・ドオォォォォォン!!!


≪たーおれーるぞーーーーー≫


 カーーーーン・・・カーーーーン・・・カーーーーン・・・・・・

 ミシミシミシ・・・パキパキパキ、バリバリバリバリ!・・・ドオォォォォォン!!!


 カーーーーン・・・カーーーーン・・・カーーーーン・・・・・・

 ミシミシミシ・・・パキパキパキ、バリバリバリバリ!・・・ドオォォォォォン!!!



 ・・・・・・

「ねえ、おかあさん・・・リスさんのおうち、無くなっちゃわない?」


《ふふ、心配無用ですよ。これは『倒し』と申す、天のいぬが上空から地上へと舞い降りてくる音なのです》


「へぇ~、おそらにお犬さんがいるんだ!見にいってもいい?」


《それはおよしに。仮に天狗の仕業だったとしても、其処に行けど私たちには何も見えはせぬ。別に『空木返し』と云う、狐や狸とう畜生の仕業だったり『杖突き』という輩妖怪の場合、一緒に連れていかれ危険極まりないのです》


「ふ~ん、そうなんだ」


《それに、きこりが木を倒す音を真似て、その音に紛れ天狗もこっそり現世へとやって参るほどに人目を気にされる羞恥心の塊りですので、見に行かれるとこちらも心苦しくなりはしませんか?》


「そっか。うん、そうだね。分かった。ありがとう」


《・・・それでは、時間のようです。また、来年に・・・・・・》


「・・・うん」


 天井に向けてあずさは手を振り、母にお別れをした。例年、住職に教わったように玄関先で「送り火」を焚き、改めて部屋にある仏壇のお線香に火を灯す。両手を合わせてだけの母との会話に想いを馳せる。


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