憑霊

 翌日。


 桃ちゃんに場所を伝え、霊触でもビジョンを伝えた。


「・・・ああ、OK。大丈夫。行ったことある場所らへんやわ。ほな、行ってくる。ありがとう」


 少し桃ちゃんの元気が無い。いや、もっと元気が無かったんだけど、この答えを持って何をすべきかが明確となって、ちょっと笑顔が帰ってきたぐらいだ。


 大丈夫だろうか・・・凄く心配になる。出来れば、見守ることでも出来ればとまた、ボクは自分の無力さを痛感しちゃう。


 強く握りしめた自分の手に、チャコの首輪の金具が食い込んで気が付いた。桃ちゃんに渡し忘れてしまっていた。


 とりあえず、祈ろう。なんとなくそう思った。首輪を両手で握りしめ、眉間に掲げ祈った。誰に何を祈るのかも分からない。ただ、チャコと犯人だった女性の父親の供養と成仏に。そして飼い主の子の悲しみの連鎖が悪い方向へと行かないようにと、ひたすら願った。




 すると、ぼんやりとだけど桃ちゃんの視線が視えてきた。断片的だけど・・・桃ちゃんが川の小石や砂利をかき分けて掘っていく。するとすぐにチャコらしき遺体を発見し用意していた靴箱へとチャコを入れた。





 次に視えたのが、今度はもうチャコの飼い主の自宅前。母親らしき人物が箱を受け取る。なにやら説明をして桃ちゃんはお辞儀をして帰っていった・・・・・・





 ボク達は泣いていた。ボクは単独で千里眼が使えたことなんかよりも、なんとかボク達なりの結果でしかないけれども、目的が達成できて良かったと思った。桃ちゃんの力の影響と、チャコへの共通した想い。そしてこの首輪があったからこそボクにも見えたことに感謝した。これできっと、チャコも必ず成仏し、きっとどこかで転生してまた楽しく暮らせるんじゃないかと。飼い主の子に供養され、いい「縁」が続く時が来ることをまた祈り願おう。





 桃ちゃんが帰ってきた。ボクはやけに早いと感じた。でも実際の時間はもうは経っていて、ボクの体感は。どうやら一人で行う千里眼は時間の間隔を奪うみたいで、まだまだボクは力を掌握できていないのは明らかだった。


 桃ちゃんの所へと駆け寄りたくて立ち上がろうとするが、ずっと正座で実質、四時間も祈っていたみたい、だからもう足だけでなく下半身が痺れて全く動けなかった。


 悶え苦しんでいる最中、桃ちゃんがボクの所までやってきてくれたんだけど、生まれたての小鹿のようなボクの姿を見られて爆笑されて終わっちゃった汗。恥ずかしい・・・・・・


 痛くて助けを求めて出した手の下、桃ちゃんの脇に平然と舌を出しながら戯れているチャコの霊が、桃ちゃんに憑いて来てしまっていた。


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