捜索と探索②

 梓さんから提案してくれた。チャコの霊を探そうと。


 いつもの訓練の延長上線だった。チャコの口寄せを行う程でもなく、ボクの千里眼でチャコが落とされた川から下流へと探すだけの簡単なことでもあった。


 橋の上から水面まで十メートル以上はあり、なんとか生存できているかどうかも運次第。もしかして、生きているかもしれないという願いも込めて、シャルと桃ちゃんが犯人を捜している間にボクらはチャコの捜索へと着手していた。


 下流へと霊視しながら探る。問題は前にも言ったように川や橋、土手には多くの霊が彷徨っている。その中からチャコだけを見つける方が大変ではあるが、今はチャコの首輪が手元にはあるので梓さんが誘ってくれる。シャルが居てくれれば一方通行かのようにチャコに元へと行けるんだけど、それではボクの訓練にもならないとも思って、何も言わずに霊視とチャコの意識へと集中してみた。すると、ボクの視線が急に水面に叩きつけられた。


 頭から落ちたみたい。意識が朦朧として脳震盪を起こしている。これは、』がボクと『協調』している影響だ。なんとか水面へと顔を出し呼吸しようとする。しかし、水が鼻から流れ込んでくる。そのままどんどん流されていく・・・・・・



 ボクはチャコの視線から外れて元に戻ると、川の湾曲した地点に立っていた。この下に、チャコの遺体が埋まってるのは間違いなかった。


 場所の把握に周辺を確認する。リバーサイドとして景観を意識して建ったであろう大きめのマンション。何らかの工場の煙突から白い煙が立ち上っている。


 上へと視線を上げて、もう少し広範囲を見下ろす。後ろを振り向くと落ちたであろう橋が架かっている。そこから、約百メートルぐらいだろうか。左側が比較的、都市部。桃ちゃんや犯人が住んでいた地域だろう。右側は畑や農場、工場が多い産業地域。



 ふと、川の上流、山の方へとボクの意識が気になった。



 黒いが立ち上ってる。少し近づいてみると直ぐに気が付いた。あの双子と老人が幽閉されて死んでいった古民家だった。まさかこんなに、桃ちゃんが住んでいる場所からという言い方になるけど、こんなに近い場所だったのかと意外でもあった。この川の上流、隣の、隣町ってぐらいの場所だ。



 まぁ今はそんなことはどうでもいい。以前に接触して少し「縁」ができたことで、遠くからでも視えただけで今はチャコとの縁のが大事だ。




「・・・梓さん、ありがとうございます」


「もう、いいのですか?」


「はい。十分です。後はチャコを供養して、飼い主さんに遺体を届けましょう」


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