追跡

 ボクらは息切れをしながら集中した。普段なら絶対にこんな状態で集中なんてできっこなかった。疲労と酸欠による荒い呼吸、今すぐにでも横になって休みたいっていう欲求とか惰性とかで頭が支配されてしまう。しかし、これが団結力ってやつだと思う。一人だけで頑張ってたってどこかで甘えてしまう自分が出てくるけど、みんなも同じ苦しみの中でも頑張っているんだという思考が、自分への甘えを掻き消してくれている。そしてその意思の『共感』が今三人を『共鳴』している。



 チャコが攫われていく。外の空気の匂いを感じる。シャルの能力がボクにも感じる!風が頬を撫でていく。桃ちゃんの霊触だ!やった!


 桃ちゃんがまるでボクの手を引っ張ってくれているようだ。その先でシャルが匂いを追っている。まるで本当に警察犬みたいに。



 車の移動が速い!見失いそう!!


「大丈夫。僕に任せて」

 シャルが諦めずに匂いを辿る。桃ちゃんが周辺の心の地図を開きながらシャルの手を掴み、ボクの手を引っ張る。


 すると、白のワゴン車が見えてきた。大きめの川に架かった橋の真ん中で停車している。追いついた!



 「「・・・え?!」」


 中年の女性がチャコを川へ投げ捨てて、直ぐに車に乗って去っていった。なんてことを・・・・・・


「あんの婆ぁ!!」

 桃ちゃんがキレた。シャルはそのまま車に残ったチャコの匂いを追いかける。


 道はぐるっと回り道をしてさっきのチャコの家へと戻ってきた。そこでビジョンが消えてしまった。


「くそっ!!」

「最低な人だね」

 怒りで興奮している桃ちゃんと、ショックで青ざめ引いてしまったボクの拍子が合わなくなって、調が中断しちゃったんだと思う。


「最後の、あそこの近くに犯人が住んでいるってことかな」


「絶対に探し出してやる、あのクソ婆ぁ」


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