探索

「・・・どう?見えた??」


「・・・うん、連れ去られたみたい。中年の女性で・・・白のワゴン車」


 ボクは目を開けて桃ちゃんの方を見た。桃ちゃんは少し不安な表情をしている。間違いなく犬の感情を感じとって共感共鳴している様子だったので、ボクが珍しくこの場をリードした。


「いけるね!犯人の顔も車のナンバーも見えたよ!もう一回、いい?頑張ってナンバー覚えるから」


 それから三回確認して、女性の特徴と車のナンバーをメモした。


「・・・あんた、絵、下手すぎやな・・・・・・」


「・・・え汗」





 そうして、その日の夜にボクは梓さんとの訓練の時に、首輪を持って挑んだ。ボクの増強された力でどこまでできるのか、試す番だ。


 まずは犬の、チャコの行方。そして犯人の居場所の二点。


 桃ちゃんと見た場所とチャコに意識を集中し、後を追うように視線を流していく。


「・・・この場所は?」


 梓さんが地味な千里眼の『』に素朴な疑問を持って、質問を投げかけてきた。

 今まではあくまでも訓練なので、海中の底やマグマの中。ヒマラヤ山脈の奥地から地中のアリの巣の様子など、ボクの視野の広さや細かな気づきといったマクロとミクロの世界を意識した訓練だったの。視野で言えば、物理的に言うと人や動物の体内や宇宙空間まで、精神的に言うと本人にも気づけていない潜在意識の奥を視れるまでが目標だったので、それらに比べると確かに地味だった。


「あ・・・えっと、すいません汗。桃ちゃん・・・桃華ちゃんの知り合いのここの家のペットが行方不明って聞いて、ボクの力で探せないかなって思って・・・ダメですか?」


「・・・いいえ、いいですよ。わたくしもお力添えいたしましょか?」


「いえ・・・あ、いや、ありがとうございます。えっと・・・一回、自分だけでどこまで出来るか試してみてもいいですか?」


「分かりました。是非、やってみて下さい。だから、その輪っかを持っていたのですね」


「はい。これは、そののなんです」


「では、改めて・・・どうぞ」


 ボクはその後、思うがまま探してみたけど、全く見当が付かなかった。直感的に感じるかもと思ったんだけど、そういった能力はボクにはやっぱり無いようだ。けど、意識と何かの繋がりを持てばそこの場を見ることが、今でいうこの首輪が落ちていた犬小屋の前から千里眼を持っていけることが分かった。


「・・・ふぅ」


「ダメでしたね」


「何か、いい方法はないですかね・・・・・・」


「では、助言だけ。さっきの場所の特定は、どうやってできましたの?」


「あ、ええっと・・・・・・」


 ボクはもしかして怒られるかもとか考えながらも、隠し事なんて出来ないと思い桃ちゃんとの作戦を全て説明した。



「なるほど。発想としてはいい案だと思いますよ。しかし、程度は捜索とか調査だけにしてて下さいね。決して、悪霊や怨念の追跡はしないように、お願いできますか?」


「あ・・・はい!勿論です!」


「では・・・私はあなた方が行っている、要は古杣さんとシルバさんのように共に能力を発動させることを『調』や『』と言います。みなさんは英語で『cooperateコアポレイト』『コアポレーション』と言ったりもしていますね。その『協調』を、シャルルさんとも実施してみてはいかがかと」


「シャルと?・・・あ!」


「ええ。もうお分かりですね。三人の『協調』がどこまで『』できるのか・・・それ次第ではございますが、そこは私も楽しみですね」


 なるほど。シャルの『霊嗅』なら、辿って追跡が出来るかもしれない!明日、早速やってみよう!!!


「ありがとうございます!!」


 梓さんは優しく微笑みかけてくれた。


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