自主練

 ってことで、ボクと桃ちゃんはタッグを組んで『浄霊』の新たな形として、試行錯誤をすることになった。


「・・・さて、いきなりここの屋敷内にある、なんかいかにもヤバそうなやつに手ぇ出す訳にもいかんやろ?ってか、絶対に怒られそうやん?」


「うん、だと思う」


「ってことで、わたくし、今から調達しに行きます!」

 そう意気込んで言っている手の指が九十度に折り曲げて、陸でも海でも空軍でもない敬礼をしながら屈託のない笑顔で背筋を伸ばしている。かわいい♡


「どこにいくの?」


「えへへへ。ちょうどね、うちの近所の子んとこのちゃんっていうペットの犬が行方不明なんやて。庭の犬小屋から首輪が外れててそれだけが落ちてた。あんなん勝手に外れることなんてそうそう無いやろ?誰かが外してチャコ攫ってったんちゃうかって」


「ああ!なるほど!そういった捜索なんかボクらの能力の相性はピッタリかも!!」


「せやろ?・・・まぁ、『浄霊』とは全然関係ないけど、お試しには丁度いいやん?やってみいひん?」


「いい!すっごく良いと思う!」


「ほな、シャルの買い出しのついでにその首輪、借りてくるから待っててな」


「OK!代わりにここの掃除、やっとくね」


「あ、いいの?じゃあお願い。次はね、シャルの『銀杏いちょう』の部屋の周辺の予定やったから、よろしく。あ、掃除機当てるだけでいいからね」



 そうしてボクらは一旦は分かれて各々、良い兆しを感じながら準備に勤しんだ。





 時刻は黄昏時。




「ええか・・・いくで?」


「・・・はい」


 二人で手を繋ぎ、お互いの開いている反対の手で首輪を掴んでそれぞれの感覚に集中する。



 桃ちゃんの溢れんばかりの湯気オーラが、繋がっているボクの手を包んでいく。温かくて、今日は桃と苺の香りがしている。どこかで苺を食べてきたんだなと直ぐにわかる。その香りがボクからも感じるようになってくると、ボクの瞼の裏にチャコちゃんと思われる犬の姿が視えてきた。




《誰かが、犬を抑えている》《けっして、可愛がっている感じではない》


《犬の感情を少し感じる》《これは桃ちゃんを通して感じるのか》


《遊んでくれるのか、何なのか、家族の匂いじゃないし戸惑っている》


《抱きかかえられて、車に乗せられていった・・・・・・》


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