遺言
梓さんは、桃ちゃんに期待している事は遺族や誰かに言い残したことや、伝えたいことがある霊がそもそも多いから、それがその後に無念となりやすく生前の愛や絆が強ければ強いほど成仏されないでいるらしい。皮肉なことよね。
これまでその解消法、浄霊としては危険な儀式をわざわざ行う必要があった。
一つは梓さんの「イタコ」「憑依」「口寄せ」
でもこれは本当に危険で、間違えたモノを憑依させてしまう恐れと、肉体を貸している間の梓さんの幽体がこれまでの『因縁』により攻撃された場合、完全に無防備な状態で即死の可能性が高くなるんだって。
もう一つは古杣さんの「霊聴」だけど、これは目の前に対象である霊が居る必要と、その存在意思が会話が可能なだけの思念の強さが無いとダメで、そしてそこまでの強い霊体思念の場合、殆どが恨みだったり復讐心であることといった負の意識が多い。家族、遺族になんらかの危険が迫っているようなメッセージを残したいって言う霊も強いけどね。例えばで聞いた話だけど、その霊が殺されてその犯人がまだ捕まってないとか、誤認逮捕されていて次に家族が狙われているので、どうしてもそれを伝えたいといった程の愛の強さが居るそうな。
でも、桃ちゃんの能力を使えばそこまでじゃなくても伝えたい後悔、無念があれば、生前に使っていた物や遺体と接触し、そこの「一番強い思念」を感じ取って伝えることが安全にできる。
遺言書の不正や騙そうとする遺族以外の人物がいると、その亡くなった霊が無駄に無念となり成仏が出来ず、現世に留まってしまう。そういった『悪霊予備軍の事前対処』その『予防対策』として桃ちゃんの能力を買っているのもある。
物の場合はやっぱり生前に使っていた時の「想い」が残るんだけど、まだまだどうしても「一番強い思念」しか感じて取れないでいるので、遺族や霊自身、そしててこっちの意図した答えが得られることは難しいみたい。そうそう都合が良くならないってね。
桃ちゃんと出会った時、シャルとデザートの味というか食材当てゲームは、そんな訓練の一つだったらしくイチャついていた訳じゃなかったみたい照汗
確かにボクの眼にも不安定な霊体が視えたことがある。「霊には足が無い」って、日本の霊では定番なんだけど、それはその霊の不安定さが原因なことが多いんだよね。
でも、強くて部分的に無いこともある。それはよく聞く怖い話であるように、足を無くしたとその霊が認識しているから。
梓さんの幽体にタトゥーが無かったり、目が視えてたりするのと同じように、その霊が無いと思っているなら無くなり、在ると思っていれば在るんだよ。
『都合のいいものしか見ない』
というのも、意識的というか認識的なことだけでなく「思い込む」ことでもそう成っちゃうってことだね。
見ることも聞くことも、読むも嗅ぐも味わうのも、伝える側と受け取る側の両方の力で成り立っている。一方通行ではないんだ。
そしてそのことは自分にも当てはまる。視えると思えば見えてくるし、出来ると思えば出来るようになる。自分の持てる現能力の範囲内で、の話だけど。
在るモノを無いと錯覚することがある。それは在ると再認識するだけで解決するのだが、無いモノを在ることには出来ない。そんな感覚的なことまでも、生者と死者の違いなんてのは無い。訓練とは、そんな自己認識の把握にあると古杣さんが言っていた。霊体も、そんな自己認識の強弱が思念の強弱にまで関係があるんだって。
逆に考えると、桃ちゃんの「一番の思念」を感じられることとは、他の邪魔な思考や複雑なことに影響されないという、確実性があるということが時に素晴らしいこともある。
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