桃華
シャルに開け放たれた襖からは、さっきの甘い香りがフワッと漂い、ボクは少し反省する前に恍惚としてしまった。
「やっぱ、
「・・・だから、はよどっか行きぃや。いっつもおるけど色んな意味で大丈夫なんか?・・・ってか誰ぇ?この子」
ボクはやっと喋れた声なのに、色々と情報が多くてどれから対処したらいいかが分からずに声が出なかった。
甘い香りで恍惚としながら、見た目の雰囲気とは違いコテコテの関西弁のギャップと、冷たいことを言っているようなセリフだが、決して嫌がってはいないニュアンス。そしてシャルの、ボクが居た事を分かっていたのかどうなのか分からないさっきのセリフなど。
「あ、え、えーと・・・・・・」
「ああ、こちらは千鶴ちゃん。先月からここに・・・・・・えぇ?!千鶴ちゃん!声!いま喋らなかったぁ!?」
「う、うん、まだ声帯が完全に開き切ってないから声は小さいし、言葉によっては”どもる”けど、なんとか・・・・・・」
「やったー!よかったねぇ!頑張ったぁ!偉い!」
そう言ってボクを抱きしめるどころか、抱き上げてきた。誰よりも一番、全快に喜んでくれるシャルが、ボクには照れくさくも自分の声が出た時よりも嬉しい気持ちになった。
「えーと、改めて・・・桃華ちゃん、ちょっと時間大丈夫?」
「ああ、ええでー。なんなん。かわいい娘やなぁ」
ボクよりも背も小さくてかわいい娘に、かわいいと言われるほど嬉しいことは無い。掃除を一生懸命やっていたのだろう、玉のような汗が滲み出しているのも少し色気があった。
「こちらは千鶴ちゃん。先月の頭ぐらいにここに来てずっと療養中だったんだ。こちらは桃華ちゃん。僕と一緒にこの屋敷の家事全般をやってくれてるんだ」
「は、はじめまして。よろしくお願いします」
ボクはまた照れくさくなった。
「はじめましてぇ。よろしくやでぇ。こいつに変なことされてへん?大丈夫?」
「ちょっと、桃華ちゃん。僕は変態じゃないって」
「なに言ってんのよ。ずっとうちの匂い、犬みたいに嗅いでくるくせに」
「いや、ちがうってー、仕方がないじゃない、そういう能力なんだし」
「そんな能力が憑く段階から、変態の才能ってことやろ?」
「酷いなぁ、もう・・・・・・」
そう言うシャルだけど、なんだか嬉しそうだ。ボクでもこの香りは高揚してしまいそうな気がするから、シャルは一撃ノックアウトだっただろうなと思う。
見た目は凄くかわいいとセクシーをちょうど混ぜ合わせた雰囲気だけど、関西弁がその妖艶さを調和させてくれて親しみを感じさせる。これが違和感でもあるが、人間としての魅力を感じる要素でもあるなと思った。
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