木霊
《ど、どうしたんですか、梓さん!え?!ご、ごめんなさい》
閉ざされた目から溢れ出る涙は、頬の墨の上を伝う。ボクは何か良くない事をしたのか、自分の能力が至らなかったのかと凄く焦った。
「・・・いえ、違います。申し訳ございません・・・久しく、この様な風情を見ることが無かったもので・・・つい感動してしまったのです」
本当にそれだけなのだろうか。心配で仕方がありませんでした。もちろん、ボク自身もこんなビジョンが見えることは初めてでびっくりしたんだけど、最後のあの不審な男が全ての感動を吹き飛ばしていった。だって・・・最後・・・食いながらボクと目が合った気がしたし・・・・・・
「ごめんなさいね。私がまだ波長を合わせることができていなくて、不安定なことになってしまいました。今日はここまでにしましょうか」
ボクは全然まだ大丈夫だったのだけど、梓さんが疲労と動揺が隠しきれていない様子だったので、この場は何も言えなかった。
ペイントでした顔と身体を洗い落とすのに、朝一で入ったけどまたボクは温泉に入る。この『
あ、ボクにはまだそんな力がはないけど『木霊』たちが教えてくれるんだ。シャルが言っていた『草木の匂い』って、きっと彼ら『木霊』の存在だろうなってボクには分かった。
『木霊』の形って様々で、本当に面白い。地域、場所で大きく変わって魂みたいな精霊っぽいものから、小人のように形成されているのもある。同じ種であっても個体差があり、そこに同じ地に住まう動物たちの影響が素直に反映されるんだよね。
何故か自殺者が多い木や斬首場所となった地の木は、その影響で良くない精霊へと変貌することもある。その始まりは世界の始まりと同じく、卵が先か鶏が先か。その世界の輪廻は人とはまた違う周期があってきっと解明は出来ないだろう。その木が死者を呼ぶのか、死者がその木を選ぶのか・・・・・・
ボクが小さい時、地元の裏山にあったご神木のような巨木があって、なぜかそこはすっごく落ち着けて安心できたんだ。あれも、きっとその木の木霊のおかげだったんだろうと思う。赤ちゃんが空を見て笑っている場合のは、木霊のような精霊がその子のことを見にやってきているのかもしれません。
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