第六話 言霊(マントラ)

「俺が前にも言ったように、霊現象の大体に『縁』が関係してくるのは分かっているよね。千鶴ちゃんが視えて見られる霊にも相性があり、波長が合わなければ無関係、ただのとなる。だから、家族、身内は血が繋がりという物理的な『縁』となり得るわけだ。その『縁』が深ければ深い程、効力は増大し良い方にも悪い方にも影響してしまう」


《うん。凄く分かってる・・・・・・》


「そんな中でも、子供が親に対する想いってのは、純粋で無垢な分、強いんだよ」


「・・・私も物心が付くかつかないかぐらいの頃の話で、”そもそも”はっきりとは覚えてないんですけど。多分、何か気に入らないことがあったの時期だと思います。『死ね』というような明確な言葉じゃないかもしれないけど、そんな負の籠った言霊を発してしまって、近くの悪い霊にまで聞こえたんだと思います・・・・・・」


「言霊で直接的に生きている者へ影響するのは感情や気分的なものだけだよ。実際に操作したり支配はできない。そんなのは漫画の世界だけだ。ただ一定レベルの霊は話が違う。自我を持たず、思念だけのような霊体はずっと何らかの指示か影響を待っている状態なんだよ。例えば遺族のような生者からの祈りや願い、想い・・・だから、霊を沈めたり見送るようなお葬式や通夜、忌明けきあけがある。それらが何らかの事情で行われなかった霊が、現世に残るケースが多い」


《なんとなく、分かります》


「その後、私は孤児院に預けられたのですが、何の自覚も知識もない状態で言霊の能力が自分の感情次第で発動してしまい、よく周りの子たちを気持ち悪がらせていました。無自覚で。意味も分からずに嫌われたりした

です」


「・・・無理しなくていいよシルバ。代わりに俺が喋るから」


「ありがとう・・・大丈夫です」


《シルバさんも、大変だったんだね・・・・・・》

 ボクは自分の事と当てはめてまた泣きそうになる。


「あ、私はもう全然大丈夫なんです。ので」


《え?そんなことができるの?!》


「はい。一種の『』ですけどね。言霊を自分に懸けるって言えば分かり易いですかね。自分の言霊と梓さんのサポートにて、可能となります」


《えー、便利ー!ボクも忘れたい記憶いっぱいだよー》


「シルバの場合はそうしなきゃいけなかったからだよ。だからも消して呼ばないようにする必要があったんだ」


《あ、だから、シルバって名前なのね》


「はい。本名の記憶そのものを消して頂きました。そして、シャルさんがこの見た目でそのままシルバー、シルバと名付けて頂きました。このアルビノを広めるという意味でもこの名前は気に入ってます。私がもし自分で本名を唱えてしまうと””恐れがありますので」


《何を呼ぶの?》


「すいません、その相手の名すら言えないんです・・・・・・」


《ああ、その場合もその何かを”呼んじゃう”ってこと?》


「はい」


「シャルのケースの話は聞いたよね。そんな感じでみんなそれぞれの『因縁』があるんだよ。シルバにも、この能力や血筋による『』がね」


「古杣さん、その言い方相変わらず好きですね」


「俺もみんな、きっとシルバも『ような縁』だろうからね」




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