第六話 宿罪

「要するに僕がここに来た理由は、この自分の能力の因果と梓会長との繋がりも大きいんだけど、でも一番はここ日本の文化さ。最初はアニメや漫画から触れだしたことだけど、こっちに来てみて日本語を勉強しもっと文化や感覚を学び知っていくと霊や神に対する扱いや考え方に一番、衝撃的な感動を受けたんだ。尚更、興味が尽きないね。また不思議なのは日本人の多くは『無宗教』という事実さ。でも、日常的にお祭りや御参り、先祖供養や行事をはっきりとした仏教徒でもと認識しているのに行っている。きっと意識的ではなく無意識に、まるで””自然や神、そして悪魔とさえ呼ばれる存在ですら受け入れ、認める。世界が今現在、やっと理解しだした『』というものを大昔から知っている。いや、TVやネットの世界を見るかぎり、だったのかもしれない。海外の、時に西洋文化では『無神論者』という世界観の方が信じられないんだ。現実というのは残酷で非情、弱肉強食だ。そんな世界を受け入れ認め、許せる心を持つには道徳心や正義感を学び、何かにすがり生きていかないと自我が崩壊しそうになる程だよね。嫌なことも良いことも、自分の責でなく”神の思し召しが無かった”と諦めの境地か、それか感謝をしていく術としても宗教は成り立っている。さっきも言ったように西洋文化とは明確に善と悪、天使と悪魔という白と黒、光と影、長と短が分かれ常に対立関係が成り立ってしまうもの。そうしないと納得がいかない。しかし日本は悪・・・妖怪や化け物といった存在すら神のように扱い、敬い、崇め、悪い部分も認め受け入れていく。これは僕たち人と同じことが言える。悪い人間、罪人を断罪し差別や忌み嫌い続けたとして、問題は解決するだろうか。なにが変わるのだろうか。恨みや憎しみを増長し悪を膨れ上がらせるだけなんじゃあないだろうかと・・・僕は個人的にそう思ったんだ。これは僕のこの血に流れている過去の罪と同じだ。多くの罪人を法の名の元にただ葬り続けてきた。・・・なら、僕は処罰ではなく『』を与えようと。多くの悪人を全否定してきたこの血筋に染みつき憑りついた数多の『怨縁おんねん』たちを、何年かかってもいい、一人ひとり『』していこうと決めたんだ。その心と意思を学び、もっと知る必要が僕にはまだまだある。そういった精神を、梓さん達やそして千鶴ちゃん、これからは君からも教えてくれないかい?」


 ボクは、なんだか日本人であることを誇らしく感じた。ここまで日本のことを尊重し言ってくれるシャルに対し、誠心誠意を込めて接していこうと思いを込めて、手を取り握りしめながら大きく頷いた。




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