第3話 『クレア・ボヤンス』
で、その後、ボクはまだ未成年だし親戚の家を点々とするんだけど、ボクの目の前で起きた両親の惨劇のショックで、言葉が喋れなくなった。口が利けなくなったんだ。変なものは見えるし喋んないし、こんな奴だれも可愛がるどころか相手なんかしてくれないよね。自分でも分かっているよ。しかもこんな身体だし・・・・・・
ある日、親戚の叔父さんが会社の同僚や上司を自宅へ連れてきて、今でいう「宅飲み」ってのをやりだしたんだ。叔父の家の近くの山には立派なゴルフコースがあって、ボクがこの親戚の家にお邪魔になる以前から定期的にやっている定例行事みたいなもんなんだって。極寒の真冬、それ以外の季節になるとちょくちょくとゴルフを楽しむために前日の金曜日か土曜日の夜にやってきては宅飲みして、翌朝にはコースへと出かける。各々の自宅からゴルフ場へと繰り出すよりか効率的だし朝も少しゆっくりできる。叔父さんもそれが目的で職場からはまぁまぁ離れた地方にワザと住み、接待ゴルフで今後の仕事の出世を図っているみたい。リーマンって大変だよね。
すると、どんどんと彼らはほぼ毎週といっていいほどにゴルフクラブを担いでやってくるようになった。ただその目的の半分は、ボク自身だった・・・・・・
いつも叔父たちがリビングで飲んでいる間、ボクはひっそりと自室で本を読むかヘッドフォンを付けて音楽を聴くか、動画かなんかを見るかにしている。できるだけ音をたてないようにTVなんかは付けないようにしていたんだけど、その日はどうしてもトイレに行きたくなって、そこであのじじいと鉢合わせてしまったんだ。そうして、叔父からみんなに紹介をされることとなり、それからあいつらがくる頻度が増えてきた。
酔っぱらったフリをして、ボクの部屋は二階なのにボクの部屋とトイレを間違えたり、叔母が用意したあいつらの寝る部屋と間違えて入ってきたり、なにかにつれボクと絡むようになり、そして・・・・・・
ボクが喋れないっていうことをいいことに、最初は上司っぽいじじいだけだったんだけど、その翌週からは同僚っぽい若い方もボクの部屋にやってくるようになったんだ。
そうしてある日、同時に二人から襲われることになり代わるがわる一晩中、弄ばれることとなった。心身ともに疲れ果て、シャワーを浴びて洗面所で泣いているところに叔父がやってきた。明らかに泣いているボクと目も合って、身体には痣がちらほらとある姿も見たはずだが、叔父は後ろめたく目を逸らしただけだった・・・・・・
ボクはそれから階段から上がってくる足音だけでビクつくようになり、どんどんと更に陰キャになっていた。
叔父たちはとくに変わったこともなく普通に接してくれていた。今、思えばそんなことですらボクは利用道具にすぎなかったんだと思えるんだけど、当時は世話になっているという立場もあったし、ボクの被害をうまく信用してもらえるようにどう伝えればいいかも分からなかった。確かにボクは男の子が好きで恋愛対象も男性だけど、じじいは嫌だし強要なんてもってのほかだ。しかし、一番嫌なのはいつも拒否しきれない自分に対しての嫌悪だった・・・・・・そうしてますます心のキズは増えていって声を出すことも余計にどんどん出来なくなっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます