第12話 ダンジョンボスと筋肉

「ほう、これは……」


 一体どんな仕組みになっているのだ。

 目の前に広がる広い部屋、入って扉が閉まった瞬間に篝火が灯り部屋全体が明るくなる。


 それを合図にドスドスと足音がなる。

 そうか、あれがボスというやつか。


「少しは張り合いがありそうだな」


 視界に映るのは俺の3倍はある身長の緑の魔物。

 手には大きな棍棒。

 今までのやつと違い全体ががっちりとしており、かなり筋肉質だ。

 こいつはしっかりと筋トレをしていそうだ。

 サイドチェストで見せびらかしてくるなかなか良い筋肉に思わず唸る。


 こいつはゴブリンなのか? 今までのヤツとは格段に違う。

 ――いや、だからこそボスなのか。


「では参れ」


 俺の言葉に反応しヤツが棍棒を振るう。

 よし、どんなものか受けてやろう。

 左腕で防御する。


「ヴギ?」


「ふむ……」


 期待したんだがこんなものか。

 全く痛みも感じない。

 棍棒の性質上、少し押される感覚はあるが足が動くほどのものでもない。

 なんだ、前のヤツらはこんなのにやられていたのか?


「本気でこい」


「ヴギーッ!!」


 ゴブリンが棍棒を振り回し、何度も打ちつけてくるが……やはりなんともないな。

 防御すら面倒くさい。


「その筋肉はハリボテか? 見せるためだけの筋肉など筋肉ではないぞ」


 棍棒で無理と判断したから蹴りが飛んでくる。

 が、やはりくだらん攻撃だ。


「ヴギッ! ヴギッ! ヴギッ! ヴギッ!」


 その後も執拗に連打をしてくるが、もう飽きた、鬱陶しい。

 棍棒が振られるのに合わせて棍棒を殴る。


「ヴギッ!?」


 ふむ、やはりただの木だと脆いな。

 簡単に砕けたそれに哀れになる。


「そろそろこっちの番でいいか? 筋肉っていうのはな……」


 こんな勘違い野郎には本物を見せてやらねばならん。


「ふんぬ! ――こういうのを言うんだ」


 美しい肉体に変身して奴の足を打ち砕く。

 骨が折れたか、奴がくの字になり倒れてくるところ、腹部を殴り上げる。


「ヴギギギ……」


「ふむ、まだ息があるか。やはり体が大きい分生命力は他のより高い様だな」


 泡を吹きながら、絶え絶えに息をするヤツの頭部の前に立つ。


「だが、これで終いだ」


 拳を引き、トドメの一撃を脳天に振り落とす。

 グチョッと気持ち悪い感触を残してゴブリンの脳を貫通する。


 手を引き抜くと緑色のネバネバした液体が飛び出す。

 ビクビクッ! と手足が動きついにヤツの動きが完全に止まった。


「もっと使える筋肉を育てるんだったな」


 ハリボテのテンパックを見ながら言い放つ。

 ようやくまともなのに逢えたと思ったんだが、とんだ勘違いだった。


 光に包まれヤツの姿が消える。

 代わりに残ったのは綺麗で今までのよりも大きなゴブリンが描かれた銀のコイン、それに紫色の結晶のようなもの。


「とりあえず持って帰るか」

 

 ♢


「えっ、倒したんですか? いや、それよりもさっきのお嬢さんと同じ人ですよね?」


 部屋を出ると守衛が驚いた表情をみせた。


「そうですわよ? 今の姿の方が美しいでしょう」


「い……あ、そうですね」


 なんの間だ、男なら即答しろ。


「ではコインを確認させてください」


「えぇ、これでよろしくて?」


 先程の銀のコインを見せる。


「確かに。おめでとうございます、ではこれをギルドの受付にお持ちください」


 ふむ、認定書……か。

 これを見せればEランクに上がるということらしい。


「ありがとう。では行きますわね」


「はい、どうぞ」


 魔物といっても大した事ないのだな。

 いや、ランクが上がっていけば張り合いのあるやつが現れるかもしれんな。

 期待しておこう。


 ♢


「おかえりなさいませ。それと気持ち悪いのでなるべくその姿にならないでください」


「失礼ですわよ」


 帰ると怪訝な顔をしたリリファにまた失礼なことを言われた。



⭐︎以下あとがきです。⭐︎

 初のダンジョン攻略はいかがだったでしょうか。

 主人公最強ものを何作か書いているのですが、無双感はアイナが一番かもしれません。

 今後もどうか本作をよろしくお願いします。

 もしよろしければ他作も合わせて読んで頂ければさらに嬉しいです。


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TS美少女令嬢の筋肉無双がエグすぎる〜病弱令嬢にTS転生した脳筋漢が筋トレで最強の肉体を手に入れダンジョンで暴れ回ってる件〜 茶部義晴 @tyabu

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