第11話 筋肉流ダンジョン攻略

「では、改めて行くとしよう」


 翌日俺はまた昨日のダンジョンゲート前に来ていた。


「あっ……どうも」


 なんだ守衛のやつなんかよそよそしいぞ。

 接客がなっとらんな。


「これでいいかしら」


「は、はいお気をつけて」


 ダンジョンゲートを潜り、草原に出る。

 さて、どこに行けば良いのか。

 とりあえず適当に行くとしよう。


 このダンジョンはレベル1、つまり1番雑魚のダンジョン。

 最初に行くことが多いから【始まりのダンジョン】と呼ばれているらしい。

 ゴブリンが出現するらしいが、どこにいるのだ。


 筋トレを兼ねて草原から森に走って行く。

 自然の中走るのはやはり気持ちがいいものだ。


「ヴギーッ! ――ヴギャッ!」


 あっ、つい殴ってしまったわ。

 初の魔物狩りがこんな形になってしまうとは。

 木々の間から急に奇声を出して飛び出すからこういうことになる、悪いのはコイツだ。


 吹き飛ばした魔物の元へ向かう。


「これがゴブリンか」


 緑の痩せた人間の子供ぐらいの体、手には棍棒。

 顔は……潰れていてよく分からんな。

 とりあえず耳はとんがっていて人間よりも大きいようだ。

 とりあえず筋肉がないな、鍛えないからレベル1の雑魚と呼ばれるのだ。


「ほぅ……」


 死骸を眺めていると光に包まれ姿を消した。

 その代わりにゴブリンが描かれた汚い銀のコインが1枚現れる。


 ほう、これが換金できるやつか。

 何に使うんだこんなの、ただのゴミにしか見えんが。

 まあ良い、とりあえず拾っていくか。


 その後も森を走る。

 ポツポツゴブリンが現れるが総じて貧弱、鍛え直せと言いたい。

 最初は分からんかったが顔は目が細くて長く、鼻はぺちゃんこ、舌が長いのか口から大きくはみ出している。


「洞窟か……」


 森が抜けたと思えば崖が待っていた。

 そしてそこに大きな空洞があり、冒険者がポツポツと入っていっている。


「なるほど、あれがダンジョンボスの部屋というわけか」


 ダンジョンにはボスと呼ばれる魔物がいるらしい。

 それを倒すと良いアイテムが貰えるかもしれないということだ。

 しかもなぜかこのボスは倒しても時間が経てばまた復活するらしく、原理が知りたいものだ。


 とりあえず行くか、ゴブリンの様な軟弱者よりも強いヤツがいるのだろう。


「これは遊園地かなにかか?」


 何もない薄暗い洞窟を進むと人の列が見えた。

 何を待っているんだと奥を見てみれば、扉と守衛の姿。


「あの扉の先にボスがいますの?」


 列の最後尾に並び前の女に問う。


「えぇ、そうよ。挑戦待ちなの」


「そうですか、ですがえらく人が多いですわね」


「ここのボスを倒すとランクが上がるからね。最初の登竜門というわけ」


 確かに受付嬢が条件を達成したらランクが上がるとか言っていたな。

 このボスがそれというわけか。


「というかあなた1人なの?」


「えぇ、1人ですが」


「凄いね。ここは4人まで組んで倒しても達成だというのに」


 なるほど、1人でなくともよいのか。

 随分甘い条件なのだな。


「そうなんですのね、ではあなたも4人で?」


「えぇ、そうよ。1人は危険だからあなたも入れたいけれど……ほらまた失敗してボロボロになって出てきた」


 どうやら今扉から慌てて出てきたあのグループは失敗したようだ。

 傷だらけで担がれている者もいるな。

 なるほど、少しは手応えがあるらしい。


「いえ、結構ですのよ」


 女は申し訳なさそうに言ってきたが、それでもはなから組むつもりはない。


 ♢


「では次の者」


「あ、じゃあ順番になったから行くね」


「えぇ、頑張ってくださいな」


「ありがとう、あなたも頑張ってね」


 手を振り女達が扉の中に入っていった。

 次が俺の番か。


 しばらくするとさっきの女がボロボロの仲間を連れて出てきた。


「気をつけて、めっちゃ強いよ……これがレベル1のボスだなんて……」


 そう俺に告げ、落胆した表情でトボトボと歩いて行った。


「次の者……1人か?」


「えぇ、そうですが」


 何か問題でもあるのか、さっさと通せばいいものを。


「ダンジョンでは生死の保証はできない、1人だと死ぬリスクが上がるが……」


 そんな事か、その方が逆に熱くなれるわ。

 ほら、筋肉もそう言っている。


「問題ありませんわ」


「そうか、ならば行くといい」


 ようやく通され、扉の中にはいる。

 さてどんなヤツが待っているのか楽しみだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る