第28話 騎士団長ウィルフリードの視点2

 すでにラディル大国は、アメリアの手の平の上。盤上をひっくり返すような芽は早々に潰し、魔王と死神、冥府、邪神まで味方に付けただけでなく、保護した人外貴族、眷族、ラディル大国の2/3の領主の賛同も得ているとか。


 もうじき魔王と死神、邪神、冥府の番人まで従えて、アメリアは復讐しに戻ってくる。最高の舞台と配役を揃えて――。

 自分はなんと幸運なのだろう。

 より素晴らしい舞台に仕上げるため、裏で手を回す。それはアメリアが知らなくてもいいこと。俺の望みは、彼女が生き残れる道をこじ開けることなのだから。


 もし望みがあるとしたらパーティー会場でダンスを踊るように戦い、アメリアの役に立って死を迎えたい。

 どうすればそのような展開になるか、考えを巡らせていた──そんな矢先、最高の贈り物が届いた。


 アメリアからのラブレター宣戦布告を受け取った瞬間、「ついに来た」と胸の高鳴りを抑えられなかった。薔薇の香りに酔いしれ、丁寧に蝋印を外して便箋に書かれた文字を一言一句、目に焼き付けようと見開く。


『親愛なるウィルフリードへ


 約束通り、地獄から戻ってきたわ。

 近々、王都に訪れる予定だけれど、無茶はしていない? 貴方が主人思いなのは知っているけれど、絶対に無茶はしないこと。死に急ぐことは絶対に許さないわ。


          アメリア・ナイトロード』


 アメリアと再会までは誰にも負けないし、誰にも殺されない。

 貴女が記憶を取り戻して生きていることを、心から感謝します。俺の愛おしい人。

 何度も何度も手紙を読み直し、その愛らしい文章をなぞった。


 それから数日おきに手紙が届くようになり、手紙の消印からみて王都に少しずつ近づいている工夫は素晴らしい。

 まさかまたアメリアから手紙を頂けるとは──ああ、なんて幸福なのだろう。

 彼女と殺し合うその日を楽しみにしていたのに、どこまでも俺の予想を覆す方だ。

 最後までアメリアにとって最高の駒として役割を演じきってみせる。



 ***



 後日、リリスからの面会の打診が来たので、面倒だったが承諾した。

 きっとアメリア絡みだろう。そう思うと口元が緩んでしまうのも仕方がない。

 もうすぐ幕が上がる。

 ああ、この胸の高鳴り。早くお会いしたい。

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