【KAC20243】何でも直る箱

湾野薄暗

1話

「やっと手に入れた…!」

俺はボロっちい段ボール箱を見つめながら喜びが隠せなかった。ようやく手に入れたのだ、この箱を。段ボール箱は50cm×50cm×50cmの段ボール箱で中は何も無い。空っぽだ。

俺は効果を確かめてみるべく、電池切れの時計を箱の中に入れた。そして段ボールに辞典を乗せて閉じる。10分ほどしてから開けると、そこには新品同様になり、針が動いている時計があった。

「…ほ、本物だ…!」と感動した。この世にあったんだ!何でも直る段ボール箱は実在した!

5年ぐらい前に殆ど嘘だらけのオカルト掲示板に『何でも直す段ボール箱というのがある』という書き込みを見て、この段ボールを探していた。やっと見つかったのである。

同封された手紙に目を通すと、

1.品物は1つずつ入れること

2.小さい物なら10分、大きい物なら数日

3.生きている物は入れてはいけない

以上の3つさえ守れば直るとのことだった。

俺は早速、破れた漫画や折れたフィギュアをかき集めて、1つずつ入れていった。小さい物ばかりなので10分ほどで綺麗に直った。漫画もフィギュアも壊れたマウスも。部屋の中だけでは飽き足らず、部屋から出て、壊れた物を探すことにした時だった。

「ど、どうしたの?ご飯?」と母親が話しかけてきた。「ええい、うるさい!」と母親をドンッと押して居間を見た。

「何か直すもの…」と部屋を見渡すが俺が椅子を投げた時に凹んだ壁や傷が入ったテーブルなど入らない物しか無くて母親に「どうなってるんだよ!この家は!」と振り返ると母親は床に倒れていて動かなかった。

「おい!」と声を掛けるが反応がなく、頭の下には血溜まりができていた。どう見ても母親は死んでいた。

「………そうだ!」

生きている物は入れてはいけないという決まりがあるが、死んだのであれば破ったことにはならないのではと思ったが段ボール箱に入らない。


「だからノコギリで切ってから箱に入れたんです。俺は悪くない」と警察官に言った。


「…何でも直る段ボール箱ねぇ…母親の頭じゃなくて、息子の頭を入れたほうが良かったんじゃないか?」と隣の部下に漏らすと「向こうに聞こえないとは言え、口が過ぎますよ」と怒られた。

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