箱に秘められた真実【KAC20243】
藤澤勇樹
第1話 親友が遺した箱の謎
東京郊外の町工場で働く沢木健太は、ある日1通の手紙を受け取った。
差出人は行方不明になっている高校時代の親友・風間翔太だ。健太は翔太からの突然の連絡に驚きつつも、手紙に書かれた「俺の部屋にある箱を開けてほしい」という言葉が気になって仕方がなかった。
翌日、健太は翔太の実家を訪ねた。玄関先で出迎えた翔太の母親は疲れた様子で、健太を部屋に通すと深いため息をついた。
「翔太は借金苦から夜逃げしたみたいなの。あの子はいつも探究心が強くて、何かを追いかけているようだったわ」
健太は黙って頷くと、翔太の部屋に入った。綺麗に整頓された部屋の片隅に、一つの箱が置かれている。それが手紙で言及されていた箱に違いない。
箱を開けてみると、中には翔太のものと思われる日記帳と、古びた地図が入っていた。日記の最後のページを開くと、「真実はすべて箱の中に」という文字が目に飛び込んできた。
「一体、何の真実なんだ…」
呟きながら健太は地図を広げる。見覚えのある場所が記されていることに気が付いた。
地図に導かれるまま町を歩いていくと、健太は不意に立ち止まった。目の前には、高校時代に翔太と通っていた花屋があった。
そこで店番をしているのは、翔太と同じ高校に通っていた芹沢美咲だ。
「久しぶり、健太君。翔太君の手紙、受け取ったみたいね」
美咲は物憂げな表情で言葉を紡ぐ。
「私にも翔太君から連絡があったの。箱の中身、見せてもらえるかしら」
不審に思いつつ箱を美咲に手渡すと、彼女は躊躇なく日記帳を開いた。そこには、健太の知らない翔太の一面が記されていた。借金苦という表向きの理由だけでなく、ずっと追い求めていた何かがあったのだ。
美咲は小さくため息をつくと、健太に向き直った。
「翔太君が追っていたものの正体、私にも分からないわ。でもこれは、3人の人生に関わる大切な何かのはず。真相を突き止めましょう」
彼女の瞳には強い決意が宿っていた。
翔太の遺した謎を解き明かすため、そして消えた親友の真意を知るために。
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