箱の中身は……
「さあ、時間切れですっ! 答えは何っ? さくらさんっ」
司会者に答えを促され、私は覚悟を決めた。
「箱の中身は……」
スタジオ全員が固唾をのんで私の回答を見守る。
「チ〇コ!」
私はアイドルらしく元気に、そう回答した。
正解? まさか、不正解? どっちなの?
私は祈る気持ちで胸前に両手を握り締め、司会者を見つめ答えを待つ。
しかし、この時私はおかしな空気に気づいた。
周りを見ると、誰もが口をポカンと開けて私を見ているのだ。
もしかして、私が正解を出すとは思わずに、皆ビックリしているのかな?
「あ、あの……正解は?」
時を戻すべく司会者に進行を促すと、我に返った司会者が首を振り、気を取り直すように発表した。
「残念っ! 正解は……ご自分の目で確かめていただきましょう!」
くそっ……外したかっ。一体何が入っていたのよ!
恐る恐る箱の裏に回り込んで覗き見ると、毛が生えた棒状のものが鎮座しておりました。
ずこぉぉぉぉぉっ! 山芋かよっ! 紛らわしいんじゃボケがっ。
ちくしょぉぉぉ、クソスタッフにまんまとハメられたっ。
ごまかさないと!
「てへっ、山芋さんだったピョン♪」
私は冷えこんだ空気を変えるべく、ウサ耳ポーズで可愛くキメると、スタジオの全員が見事にズッコケて、それがオチとなり無事収録が終了した。
一か月後、私の収録部分は丸々カットされると思ったが、自宅でバームクーヘンを食べながら収録回を観ていると、しっかりとピーが入って全部が放送されていたので、思わずむせこんでしまった。
よく放送できたものね……。クソスタッフの悪意を感じるわ。
その放送日の数日後、気になってエゴサすると、その回はファンの間で神回として、大いに盛り上がっていて、さらに視聴率は番組史上歴代TOPだったらしい。
「はぁ……アイドルやるのも大変ね」
私は、ブラックコーヒーを飲み干すと、再びエゴサをするべくカタカタとキーボードを鳴らした。
了
箱の中身はなんだろな? 八万 @itou999
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